進駐軍の小学校視察

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昭和二十三年六月、中津軽地方事務所から「職員に周知せしめ、学校経営、学級経営に遺憾のないよう措置方を要望する」として、青森軍政部(米国進駐軍)教育部長エー・クロスから青森県教育課長宛に来た「覚え書」の写しが各学校宛に送られた。
○学校視察について
 1 仕事に対して熱意を示せる教員多し。

 2 生徒の態度一般に良好。

 3 学校の美化に生徒の努力せる学校二、三あり。

 4 生徒の勉学活動良好なるクラス多し、即ち生徒の作品、絵画、地図、図表等教室に掲げられあり、また極めて積極的なクラス・デスカッションがあった。また全クラスの生徒の前で話をしたり実演をした者もあった。

 5 また楽しく勉強しある者あり。

○不良な点
 1 先生、生徒のために特別に放送されるラジオ放送を、多くの先生生徒が校内校外に於て聴取していない。

 2 生徒の総数、出席生徒の各課目に対する点数並びに学籍簿の如き累積的指導記録を正確にとっていない所がある。

 3 講義の方法で教授している教師が多い。勿論或る程度の講義が必要であるが、講義が多いということは教授が貧困であると考えられる。

 4 校舎の改善に生徒が使われていない。生徒間に誇りの精神を養い校舎の改善美化せしむるようにする。

 5 容貌余り清潔ならざる教師あり。教師は生徒の範たるべきものなるが故、常に清潔且身だしなみに注意すべきである。

 連合国軍総司令官ダグラス・マッカーサー元帥の「日本人の精神年齢は十二歳程度である」と放言した有名な言葉がある。日本人の民主主義精神の遅れを指摘したものであると思うが、そこに勝者のおごりと敗者に対する侮蔑があった。それと同じく右のエー・クロスの「覚え書」も、日本の現状を無視して、いたずらにアメリカ式を鼓吹するので、現場が混乱したことも事実であった。しかし、教育上の功績も二、三にとどまらなかった。その最大のものは、学校は児童を主体に経営されるべきことを、進駐軍軍政部が再三注意してくれたことであった。