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図-2 音江別川流域の哺乳動物化石産出地点 |
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写真-3 音江別川流域の海牛化石の産状 |
下野幌層の基底砂礫層に含まれる哺乳動物化石のうち量的にもっとも多いのは海牛類の化石である。この海牛化石骨の特徴は、骨組織としての海綿質の発達が悪いこと、肋骨がバナナのような形態で、丸くて太いこと、下顎の機能歯(役にたつ歯)が退化して失われていることなどがあげられる。このような特徴から、この海牛は北太平洋のベーリング海域に一八世紀末まで生息していたステラー海牛であると考えられている。ステラー海牛は、遊泳能力が衰え、沿岸ないし内湾の岩礁地帯で海藻を餌とした草食性の動物である。採取された化石骨は保存のよいもので、死後それほど運搬・移動されていないと思われるものである。
写真-4 ステラー海牛化石
下顎骨(上)と肋骨化石片(下)
海牛化石についで多いのはクジラ類の化石である。採取された二個の下顎骨の特徴からヒゲクジラの仲間と考えられている。クジラの骨は、このほか肋骨や頭骨片、四肢骨片なども採集されているが、ほとんどのものが丸味を帯びており、沖合いから運ばれてきたもののようである。また、数は少ないが、鰭脚類のセイウチの下顎骨化石もみられる。
注目すべきことは、これらの海生哺乳動物とともに象の臼歯や切歯(キバ)、偶蹄類(シカの仲間)など陸生哺乳動物の化石が混在していることである。象の臼歯は、右上顎臼歯一個と左下顎臼歯二個であるが、いずれも大きさが異なり、それぞれ別個体のものである。それらはツレソイマンモスゾウの仲間とされている。このゾウの仲間は、関東南部、新潟、九州北部、東支那海海底、沖縄本島、宮古島などから発見され、その生息時代は前期更新世後半から中期更新世前半に至る時期であるとされている。しかし、東北地方や北海道からはこれまで発見されていなかったものである。現在のところ、このゾウ化石については、まだ、正確な同定はなされていないが、当時の古地理や古環境を考察するための貴重な標本である。
写真-5 ツレソイマンモスゾウの仲間の右上顎大臼歯化石
図-3 更新世の旧象の分布