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地殻運動期

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 裏の沢層下野幌層の堆積盆地は、中期更新世の前期(六〇万年前ころ)になると、沈降域から上昇域に変化する。この上昇運動は、西南山地部の上昇にひきずられながら、いっぽうでは、東方からの巨大な横圧をうけながら進行した。したがって、この地殻変動は断層をつくるような急激で断続的なものではなく、ゆっくりではあるが、持続的に進行するものであった。その運動形態は、ほぼ、野幌丘陵の稜線付近を南北方向に走る軸を中心に、東西両翼がたわむような動きであった。結果的に野幌丘陵域は、そこに堆積した裏の沢層下野幌層が湾曲されながら上昇し、丘陵形成へ向けて動きだしたのである。
 中期更新世前期の地殻変動は、石狩低地帯だけでなく、日本列島の各地で確認されている。しかし、その運動形態は、それぞれの地域で異なっているようである。野幌地域での撓曲運動(*1)は、低地帯の東方地域の第三紀からの地殻運動を引き継いだもので、いわば第三紀型であるが、十勝平野では、ほぼ、この時期に、大規模な台地を形成するような急激な地塊の上昇運動、いわば第四紀型の変動で特色づけられるのである。
 中期更新世の前期末(四〇~五〇万年前)になると、野幌丘陵域も新しい台地に成長した。そして、その台地は、撓曲運動だけでなく、海退現象(*2)も加わり高さを増すが、同時に、激しく浸食されはじめるようになった。この浸食期はおそらく寒冷な時期であったと考えられる。
 
 *1 撓曲(とうきょく) まがる現象をいう。褶曲と同義語に使われることが多い。一般に地層が厚く水平に堆積した地域で基盤が上下に変位する場合に現われる。
 *2 海退(かいたい) 海がひくこと。海岸線が後退して陸域が拡大すること。海進に対応する用語。一つの海進が最盛期をすぎて海退に移った場合、ある場所における地層の岩相は、下位から泥岩→砂岩→礫岩と上位にいくほど粗粒になることが多い。