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不況対策事業

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 このような意見と調査から、松本たちは、不況対策などを含んだ対策を黒田へ上申した。それを上京する安田定則に持たせた。その回答は十月十六日に札幌に届いた。それの伺と指令は次のようになっている。
、小樽港内往還云々之事見合之事。右伺之通。
、本庁土塁ノ儀。本庁土塁ハ見合之事、但四方へ樹木植込へく事。
豊平川路筋橋梁之事。即今水流之分架渡之中洲之分ハ道形ニ普請之仕様書可指出候事。
、新川筋修覆之事。創成橋より回漕蔵迄之間別紙略図ニ基キ仕様書可差出候事。
、市中道路ノ修覆但銭函道。伺之通。
、獄屋建直しの事。見合之事。
、工業局官員昇給賞誉之事。今一応松本田中両氏へ打合之事。
、消防方鳶人足一五人納置之事。伺之通。
、水難予防云々。追テ測量之上評議之事。
 (後略)

(札幌滞在事務取扱備忘誌)


 現段階では意味の不明なものもあるが、六年十月になっていくつかの工事起工を上申していたことがわかる。定額外の事業であるから、主に不況対策と考えていいだろう。しかし指令は多くが見合わせや計画変更であった。
 しかし松本たちはこの指令を待たずに、本庁周囲の土塁建築や本庁敷地内道路の整備工事などを行った。松本はその着工の理由として、第一に四年以降の官舎官宅周囲には土塁を築いているのに、もうすぐ竣工する本庁舎には土塁がないため不体裁であること、第二に土塁のかわりに、なし、りんごなどの樹木を植えるという指令だが、しっかりした囲いがないと放牧馬が出入りして樹木が育たないこと、第三に諸職人に仕事がなくなっていること、第四に上申して指示を待っていては着工時期が遅れ、さらに降雪前着工すれば融雪後よりも安く工事の入札ができること、第五に市中の不景気に刺激になることなどをあげている(開拓使公文録 道文五七五七)。
 この工事は黒田の許可を取らずに執行された。それだけ札幌の状況が悪化していたことを示している。そのため、松本大判官と田中幹事は独断専行として処罰され、松本は罰金六円、田中は四円五〇銭が課せられた。