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開拓顧問の職務内容

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 渡米した黒田次官は駐米の森有礼少弁務使(のち代理公使)と提携しながら、グラント大統領やケプロン農務長官らと会見し、まず招聘すべき開拓顧問の斡旋を依頼した。この過程で森少弁務使がケプロンに宛てた書簡において、より詳細な顧問の招聘理由とその職務内容を示している。
 第一に招聘理由として、北海道の地勢・風土や資源を紹介しつつ、その北海道を「能ク之ヲ開成スル時ハ東洋中富饒ノ一島ト称スルニ足ル可クシテ、未ダ其成功ヲ得ザル者独リ人民ノ未ダ勧誘其愚昧ニヨルノミナラズ、官吏も亦宜ヲ得ザルヲ以テナリ」と開拓の成功しない理由を述べ、そこで「故ニ我政府之ヲ議シテ謂ラク、地質鉱山農工諸学ニ通暁シ、実地錬達ノ人材ヲ撰ンデ之ヲ任ズルニ如カズ」との結論に達した。「然レドモ我国人材ニ乏シ。故ニ今貴国ニ依頼シ、此材芸ニ長ゼル所ノ人ヲ聘シ、開拓ノ顧問ニ供セント欲ス」と、米国より顧問招聘の期待を述べている。
 ついでその招聘すべき開拓顧問に求める職務内容は、
、全島の形勢および地質鉱山等の測量ならびに検査のこと。
、道路河渠の疎通と部落村市を区画し、各所の便宜を図ること。
、樹芸・牧畜・採鉱・漁猟等の方法を講明すること。
、以上の事業の経費を概算して成功の目的を予決し、それを日本政府へ稟議して、実地に施行すること。
、常に開拓長官を輔佐して、その事務を商議すること。
、この事業に従事させるのは日本人を原則とするが、しかし学術に通暁する者を必要とする場合は、外国人の雇用も可能とすること。

とあり(開拓使日誌)、地理・資源の調査と測量、交通運輸の計画や村落・市街地の区画、諸産業開発の方法、開発計画と予算の立案ならびに諸事業の施行、長官の補佐と事務上の相談、そして必要とする外国技術者の選考という、きわめて広範な、というより調査と計画から施行に至る、開拓の全過程に関する職務の遂行を求めているというべきである。ただここで注目されることは、このような多大な職務を要請しながら、それらは稟議とか商議の段階に留まっており、その裁量権は政府・開拓使が保有していることである。唯一の権限は雇用外国人の選考権くらいのものであったといえよう。