第一節で述べたように、札幌本府建設が始まった時、現札幌市域では、仏教的施設としては札幌村に慶応四年創立の妙見堂があっただけであった。本府、周辺村の形成にともなって、寺院、説教所等も建設されていくが、同時にこの時期は神仏分離、あるいは教導職制など特に神道優位のうちに行政が推進されたので、初期に進出した宗派ほどこの影響を強く受ける傾向にあった。
また札幌は、本府として本道の行政の中心と位置づけられたため、札幌およびその周辺に各宗派の基幹的な寺院が創建され、時に応じて北海道の開拓とも関わった機能を果たすこととなった。まずこのような意味をもった基幹的な寺院について、この成立経過あるいは北海道・札幌という地なるがゆえの特徴を、それぞれに即して記述したい。