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経木真田(きょうぎさなだ)

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 内職の奨励は、官吏の妻子、家族のみならず一般へも行われた。三十八年に入ると札幌区役所の発起、北海道林業会主催で、経木真田(杉、桧を紙のように薄く削り、細い紐状にして編む)製品の講習会が女性を対象に実施された。道林業会は、経木真田製品が当時欧米各国での需要を増しつつあり、すでに各府県でも本道産の白楊(どろのき)や椴松(とどまつ)を材料に生産開始し、それも出征軍人の家族・遺族の救護事業として行っているのに着目したからである。実際に、本州から教師を雇入れ、本道の産業、殊に女性や子供に適した輸出品として前途有望の産業と目論み、講習会を開始した。毎回の講習会には七〇人から一〇〇人くらいの講習生を集め、三十八年九月には五回目の修了式を終えた(北タイ 明38・2・25~9・7)。
 道林業会の講習会が盛況にすすめられている一方、同年五月経木真田製造会社が発起人二〇人、一人一〇〇〇円ずつの出資で設立された(北タイ 明38・5・10)。すでに同年十一月段階には、札幌経木製造所北海経木商会とが操業、名刺木地、ネクタイ、婦人羽織紐等を製造していたが(北タイ 明38・11・1、11)、その編み手は家庭の主婦や少女たちであった。北海経木商会女工募集広告では、経験者は原料を持ち帰って自宅でできる仕事であること、未経験者には指導すること、稽古中であっても上達者には相当の手当を支給することなどを掲げ、家庭の主婦たちの目を引き付けた(北タイ 明38・11・15)。しかも、北海経木商会では、東郷平八郎大将の凱旋を祝って「東郷ネクタイ」を売り出し、東郷へも贈呈するありさまであった(北タイ 明38・11・19)。