開会二日目以降観覧者は、三会場合わせて一日二万五〇〇〇人ほどが入場し、五日目までで一〇万人をこえた。しかし、主催者側では当初の予想よりも少なかったので、やきもきする場面もみられた。区協賛会では「祝ひ袋」一万五〇〇〇個を準備して一〇日目から売り出し、完売した暁に抽選会をすることを予定していたが、抽選会にこぎつけたのは十四日になってからであった。十二日には、待ちに待った札幌電気軌道の電車も営業開始し、札幌駅と中島公園間とを結んで、ようやくこの頃からお盆で寺参りの老若男女や札幌・小樽の紳士淑女が会場に詰めかけるようになった。ことに開道五〇年記念式が挙行された十五日は、式参列者のほかに藪入りで暇をもらった人びとが入場し、三会場とも空前の雑沓となって、この日一日で五万人を突破した。
観覧料は、第一・第二会場共通で二〇銭、観覧券には福引付のものも売り出されたので、早くも十六日には発売予定数の一〇万枚が売り切れた。観覧者のために、『北海タイムス』は「博覧会見物御案内」や「道博彙報」を掲載して日々の催し物などを紹介するのだった。
次に第一会場の陳列館のおもなものを掲げる。
〔教育拓殖衛生館〕 二階建て五〇〇坪、階下は拓殖館で道庁出品が大半を占め、本道地形大模型をはじめ歴代長官の事蹟や、開拓の苦心を語る拓殖関係の出品が陳列されている。階上二〇〇坪の左は教育館、右が衛生館で、精巧な模型標本絵画統計一〇〇〇余点の衛生に関する出品と、道内教育の歴史を語る一五〇〇点の教育出品を網羅している。
〔農業本館〕 二階建て二七九坪、階下は道内各地より集めた主要農産物穀菽類および公私特殊出品およそ一万余点を絵画写真その他の装飾をもって本道農業界の一班を紹介し、階上は道および各郡部農会の陳列場である。
〔農業別館〕 一五〇坪の館内には、農具、亜麻、麻茎、養蚕、畜産肥料類の一般出品。その他産業組合各会社工場の特別参考品、大日本蚕糸会出品等を網羅している。
〔園芸館〕 一〇〇坪の正面入口に、農具に花模様図案の石膏彫刻のある小ぎれいな建物。札幌種苗商聯合出品をはじめ、道内および府県の参考出品約九〇〇点が陳列されている。
〔林業鉱業館〕 高い円柱が櫛比し、白い壁面に青い窓が並んだ清楚壮重な曲線建物で二〇〇坪。林業館は、本道産各種木材炭化製品燃料、工業原料、森林副産物、器具・器械方法、成績・標本模型、狩猟産物等本道林業界のすべてを網羅し、七〇九種、七〇〇〇点を陳列している。鉱業館は、道産金属非金属類を陳列し、無尽蔵な鉱物の分布を示している。
〔水産館〕 一八〇坪のドームのついた曲線型建物。本会場の焦点で、道水産試験場をはじめ道内各漁場の海産物および加工品、器具・器械等四〇〇〇点が絵画等とともに陳列されていて、本道水産界の無尽の宝庫を展開している。
〔第一参考館〕 二〇〇坪。東北六県をはじめ各府県の独特な参考出品約一万四〇〇〇点がお国自慢を発揮して陳列されている。
〔第二参考館〕 二〇〇坪。第一参考館に収容しきれないものと、朝鮮、樺太、関東州(かんとんしゅう)等各植民地の特殊出品を網羅している。
〔土木交通館〕 九六坪。明治以前から現代にいたるまでの本道の土木交通の変遷をしのばせる各種模型、実物、絵画等二〇〇余点が、本道文化進展の過程を示している。
〔機械館〕 一五〇坪。正面入口の機械の装飾が衆目をひく。道内各会社工場商会等の独創にかかる自費出品が大部分で、総点数七〇種一九二点である。
〔その他〕 以上陳列館一〇棟のほかに、富山県、東京府、新潟県、京都府の府県特設館は、いずれも水産館を中央にした馬蹄型本館の背部の第二広場にあり、協賛館である演芸館、台湾館、喫茶店、石川県特設館等は池畔に壮麗な姿で建っている。このほか各公私特設館、休憩所、売店等無数に点在し、鴨々河畔には東海道五三次大模型が設えてある(北タイ 大7・8・1)。
ついで第二会場の工業館、第三会場の水族館も次に掲げる。
〔工業館〕四〇〇坪総二階。将来物産陳列場にあてる永久的建築である。玄関脇に日本製鋼所出品の一二インチ砲が陳列。階上階下とも本道代表的工業品および各府県・植民地より出品の工業品を網羅している。
〔水族館〕小樽区第二区埋立地にあり八〇坪。本館および左右両翼館、屋外陳列水槽と三個の池に本道沿海および樺太近海その他より魚族、海猟、水禽、淡水魚類、海藻等の生棲状態が観覧できる(同前)。
さながら、本道開拓五〇年間の進歩と現況とを展示し、これを広く国内に紹介しようとの意図を示していた。