十七年四月、一年延期されていた衆議院議員選挙にあたり、大政翼賛運動の中から推薦を受けた候補者を、帝国議会に送ろうとする動きが活発化し、四月五日付で三沢札幌市長は市民に「翼賛選挙貫徹」を呼びかけた。このあと十月に第六期札幌市会議員選挙を迎えるため、市会議員は非公式に推薦制度のあり方を話し合うようになり、意見書をまとめて市長と大政翼賛会札幌支部に提出した。支部では直ちに推薦制実施に向けて、札幌市翼賛市会確立協議会の設立準備と、市常会に提出する原案の作成を進めた。
市常会は八月十五日に開かれ、市会議員選挙に推薦制を採用することを最終確認し、候補者推薦制要綱、銓衡方法、不適格条項、主旨昂揚運動の方法等を決定した。それによれば、翼賛市会確立協議会の委員は一〇〇人で、公区聯合公区選出七三、市常会銓衡二七人をもって構成し、市長は協議会を招集し、会長選挙までの斡旋を行い、その後の運営には全く関係しないこととし、六項目の候補者銓衡方法を定めたのである。
一 | 銓衡に先立って、候補者不適格条項該当者を推薦せざることを申し合わすこと。 |
二 | 第一次は、各協議会員意中の候補者五名を連記投票し、全員名簿を作る。定数連記せざれば無効とす。 |
三 | 第二次は、前記総候補者中十名を連記投票し、十票以上の得票者につき高点者より順次議員定数の倍数(八十八名)をとり、得票数を表わさざる名簿を作る。但し最下位にある同点者は八十八名を超ゆるもこれをとる。前記の結果八十八名に達せぬ時は更に単記投票により順次高点者をとり八十八名とす。 |
四 | 第三次は、前号八十八名中各十名を連記投票し、得票数により順位を定め、順次に立候補を慫慂して承諾したる者四十四名を推薦候補者と決定す。 |
五 | 確定推薦候補者の表示は五十音順による。 |
六 | 右銓衡は必ず一日中にこれを終了せしむこと。 |
この方法に対して、三沢市長は数点の異議をとなえ、特に第二次銓衡による八八人選出を全協議会員の投票によるのではなく、特別銓衡委員二五人を設けて行うべきだと主張した。公区聯合公区制を主軸に展開しようとしていた推薦候補者選びに、市長の意志を反映する特別委員を介在させ、市会構成を有利に導こうとしたのであろう。こうした制度や市長の態度について、十七年第四回、第五回市会で取り上げようとした議員はいたが、いずれも市会の協議事項たり得ないという市長方針に変わりなく、関連質問にも市長は「答弁を差し控えたい」と言うだけだった。