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徴兵

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 国民の男子は一七歳から四〇歳(のち四五歳)まで兵役に就くことを義務とされたから、準戦時期から戦時下にいたる本巻の時代は、兵事が市民生活の全般に強い影響を及ぼした。その個々の状況は各章節で取り上げているが、本節では兵事全般にわたる制度的事象をまとめることにする。
 札幌徴兵令が施行されたのは明治二十九年(一八九六)で(市史 第二巻八二頁)、これにより市民のうち、前年十二月一日からその年の十一月三十日までに満二〇歳に達する、戸籍法の適用を受ける男子は、現役兵または補充兵として徴集されるための検査を受けなければならなかった。彼らを壮丁と呼ぶ。市制施行時の徴兵令による服役年限は、現役三年(海軍四年)、予備役四年四カ月、後備役一〇年で、補充兵役は一二年四カ月であった。昭和二年これの大改正があって名称を徴兵令から兵役法と改め、現役二年(海軍三年)、予備役五年四カ月、後備役一〇年、補充兵役は第一と第二に分けて、いずれも一二年四カ月(海軍は別)とされ、その後も服役年限の改正がなされた。
 徴兵は本人にとって人生の節目をなし、家族や地域にとっても生業と直接かかわる重大事であった。検査は札幌聯隊区札幌市徴募区徴兵署によってなされるが、実務は市役所がとりすすめることになる。たとえば大正十四年の検査にあたって「左記暦年ニ恰当スル者ニ付、戸主ハ一月中ニ徴兵適齢届ヲ市長ニ提出セラルヘシ。左記、自明治三十七年十二月二日生至同三十八年十二月一日生」(札幌市公報五〇 大13・12・25)と広報しても戸主が届け出るとは限らず、翌年一月末日の締切日以後も届出を督促することがしばしばあった。本籍を札幌市に置く人のほか、寄留者のうち希望する人も札幌市で受検可能であったため、その手続も同時にすすめられた。
 この年の徴兵検査は七月二十二日から同月三十日まで行われ、会場には市役所内の市会議場があてられた。検査を受けた壮丁は甲、一乙、二乙、丙、丁、戊種に区分され(のち三乙ができた)、合格者、不合格者が決められた。合格者は各区分ごとに抽選を行い(大正十四年は八月一日)、定数にそって現役兵と補充兵に分かれる。表26①は札幌に本籍を置く人の徴兵検査結果であり、合格者のうち「その他」には要員超過、徴集免除、一年志願者等が含まれている。ただし昭和二年の法改正により、甲乙合格者のうち要員超過分はすべて第二補充兵として徴集の対象となった。この表によると、現役兵の受検者に対する割合(C/B)は一五~二〇パーセント前後で、補充兵を含めた全徴集人員と受検者の割合(D/B)は五〇パーセント後半から六〇パーセント前後にほぼ一定している。これを全国の徴集割合に比較すると、前者はほぼ同率で後者がやや高率ではあるが、極端な差とはいえない。こうしてみると、札幌市から現役として入営するのは五人に一人で、昭和六、七年にかけてもさほど大きな動きがみられず、満州事変は徴兵数に直接かかわっていないといえる。注目されるのは徴兵検査を受けない人の数が昭和三年以降急増し、三〇パーセント台に達することである(E/A)。その大半は師範学校、中学校、大学の生徒学生で、その修業年限に応じて徴集延期が認められたためだが、この取り扱いはのちに幾多の改正がはかられた。不受検者にはこのほか逃亡失踪、公権停止、事故及び無故不参者などが含まれている。
表-26① 徴兵検査人員(本籍者)
壮丁数(A)受検数(B)徴集数その他合格計不合格等
不受検
計(E)
C/BD/BE/A
現役兵(C)第一補充兵第二補充兵計(D)
大11997人808人151人296人‐人447人317人764人44人189人18.7%55.3%19.0%
 121,0759251322684004798794615014.343.214.0
 131,0379131682754434158585512418.448.512.0
 141,0469281642514154899042411817.744.711.3
 151,1441,0341822814635229854911017.644.89.6
昭 21,2181,0921852584435921,0355712616.940.610.3
  31,173915167267805143288427325818.356.222.0
  41,3271,0041762681375813539347032317.557.924.3
  51,4681,0311742732456922939854643716.967.129.8
  61,6511,1661882881546304721,1026448516.154.029.4
  71,6941,1151833042347213271,0486757916.464.734.2
  81,8171,2411683202157034591,1627957613.556.631.7
  91,9011,2701983631366974891,1868463115.654.933.2
 101,9701,3782543411597545271,2819759218.454.730.1
 111,9761,3392794161288234291,2528763720.861.532.2
1.昭和9~11年の分類項目はそれ以前と異なるので,徴集免除者は合格者の「その他」に,兵役免除者は「不合格者等」に,徴集延期者とその他人員は「不受検者」欄にそれぞれ記入した。
2.壮丁数,受検者数と他欄合計が一致しないところがあり,基礎数をもとに合計を修正した年がある。
3.札幌市事務報告』(各年)より作成。

 表26②は札幌市に寄留する人のうち、受検を希望した人の数である。したがって札幌市で徴兵検査を受検した人は表26①②を合計した数で、寄留者は本籍地で徴集されるが、昭和十六年から現在留地徴集主義をとるようになった。また、壮丁は徴兵検査の年にトラホームと花柳病の検診を受けなければならないとされ、市長は患者の発見と医治にあたるよう定められていたが、これについては第七章三節でふれることにする。
表-26② 徴兵検査人員(入寄留者)
受検許可数受検数不受検数
合格不合格疾病次年廻所在不明無故不参入監中病気,事故,死亡取消
大11623人538人8人6人562人1人‐人2人1人57人61人
 126265491956915657
 13583503325354848
 145075242045481115759
 155434721934944949
昭 25534852515111223742
  360651238550115456
  462051841559326561
  5603503445472225056
  662252440564255158
  7704595542651144954
  87116024816511235460
  967856854622335056
 1067556256161945256
 116655634716112124954
札幌市事務報告』(各年)より作成。