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志願兵

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 国民兵役を強制的徴兵による者のほか、軍隊に自分から志願して入り兵役をはたす志願兵制度がある。札幌市に本籍を置く人の志願と採用の状況は表27の通りであるが、制度の改編もあり、その数は一様でない。志願先の内訳は一年志願兵と海軍志願兵が大半を占めていた。昭和二年を例にみると、前者が八六人、後者が六七人、合計一五三人で、志願者全体の八七・九パーセントを占めている。そのほか幼年学校、士官学校予科、工科学校、軍楽、令第一二(七)条、条例(法)三三条志願者がいるが、数は少ない。
表-27 志願兵数
志願者志願取消採用数不採用数
大1189人2人20人67人
 121229428
 13140128111
 1412418736
 15167411944
昭2174512148
 316059164
 4189577107
 514265878
 613444981
 7202563134
 8290123167
 928413134137
 1028218146128
 111921376103
昭和11年のみ『札幌市事務報告』,ほかは『札幌市統計一班』(各年)より作成。

 一年志願兵の制度は、大正七年徴兵令改正によって大きく変わり、それまで中等学校またはこれと同等以上の在学生は徴兵検査自体を猶予していたが、それを廃止して全員検査を受けるものとした。満一七歳以上二二歳未満で中学校卒業程度の学力を有するものは、経費自弁で一年間のみの兵役を志願することができ、試験に合格すると実際入営するまでの期間も陸軍では彼らを在郷軍人として把握し、下級将校要員とみなすことにより精兵寡兵と粗兵多兵主義の間の溝を埋めようとしたといわれている。実際の入営者は札幌市の場合三分の一にも満たず、この制度は昭和二年兵役法により廃止となって徴集猶予が復活し、幹部候補生志願に変わった。
 海軍志願兵の募集にも札幌市役所は積極的で、検査会場に市役所をあて、毎年公報に志願を「勧誘ス」「志願セラレンコトヲ望ム」と掲載している。たとえば大正十三年十二月二十五日付札幌市公報第五〇号に掲載された海軍志願兵便覧には「剛健ナル青年諸子、男性的活躍舞台デアル海軍ニ投ジ、国防ノ第一線デアリ通商ノ保護者デアリ国力進展ノ鍵デアル、帝国海軍ノ使命ニ活躍サレヨ」とあり、水兵、掌電信兵、機関兵、軍楽兵、船匠兵、看護兵、主計兵への志願を呼びかけた。この年市内からの海軍志願者は四七人で、採用されたのは二四人にすぎない。以後毎年志願者は増加し九〇~一〇〇人に達するが、採用数はむしろ減少し一〇人前後となった。昭和七年は九四人が志願しわずか四人の採用という狭き門である。大正十三年の海軍掌電信兵募集の記事を次に紹介しておこう。
 今回海軍志願兵条例中改正セラレタル結果、入団後掌電信兵ニナリタイ希望ノ者ハ満十五歳以上デ水兵ニ採用セラレル事ニナッタ。掌電信兵ト云フノハ海軍ノ無線電信ヲ取扱フ兵デ矢張リ水兵デアル。普通水兵機関兵等ハ満十七歳以上デナケレバ兵トナルコトハ出来ナイガ、此ノ水兵ニ限リコンナ子供ニテモ兵隊ニナレル訳ハ、普通ノ兵隊ハボートヲ漕イダリ大砲ヲ操縦シタリ或ハ機関兵ナラバ焚火ヲシタリ、何レモ力ワザヲ要スルカラ子供デハ出来ナイガ、掌電信兵ハ頭脳ト耳サへ秀レテ居レハ腕力ハ入ラナイノミナラズ、電信ノ符号ナドハ子供ノ方ガ能ク覚エルノデ、海軍デハ子供ノ時カラ教育シヤウト云フノデアル。
 学力ハ普通ノ兵隊ヨリハ高クナクテハナラナイカラ、特ニ高等小学校卒業程度ノ試験ヲスル事ニナッテ居ル。身体検査ト学力試験ニ合格シテ採用ノ暁ハ、一般水兵ト同様最初ハ海兵団デ軍人トシテ基本教育ヲ二ケ月計リヤッタ後、海軍水雷学校ニ入校サセテ専ラ電信術ヲ教ハル事約一年半ノ後、軍艦ニ乗セルコトニナル。職務上必要ダカラ英語モ教エル筈デアル。海軍兵ノ中デハ此ノ兵が一番悧巧デナケレバナラナイカラ、頭モ学力モ一番秀レタモノヲ採ル方針ダト海軍ノ当局者ハ言フテ居ル。其ノ代リ腕力ハ入ラヌカラ子供デヨイ、否子供ノ方ガヨイノダト云フ。将来ノ進路ハ水兵ノ進路ト同ジデ、士官ニナレバ将校科ニ属スル部類ノ兵種デ、普通ノ水兵ヨリ年若ク入団スル丈ケニ将来有望デアル。若イカラトテ進級上後廻シニサレル事ハ決シテナイ。否海軍デ所謂マーク持(砲術学校水雷学校等デ学ブ特技ヲ修得シタルモノ)ト称シテ、進級上常ニ優先権ヲ持テ居ル方デアルカラ、二十歳以下デモ下士官ニナル望ガアル。
(札幌市公報二七 大13・1・10)