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区域指定と隣接町村

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 このような地域発展を続ける札幌市の都市計画を実行する際の範囲について、いくつかの論議がなされた。
 区制時代の経画調査委員会の報告書には、「東は月寒川、西は発寒川、南豊平川上流熊谷法華、北は苗穂鉄橋下より茨戸に放流さるゝ豊平川治水計画線に沿ふて札幌村界まで」を都市計画の区域として、札幌市の面積を拡張することが適当であるとする(北タイ 大11・10・12)。この範囲は、図2の通りと思われる。決定した札幌都市計画区域より若干狭い地域である。そして札幌市の領域をこの範囲の領域まで拡張するという考え方であったようだ。この都市計画区域は、都市計画法第一条に、「市ノ区域内ニ於テ又ハ其ノ区域外ニ亘リ執行スヘキモノヲ謂フ」というように、市の行政区域内だけでなく区域外をも含み得るものである。したがって報告書の意識は厳密には誤りといえるが、市の市域の拡張ではなく、都市計画区域を市外まで拡張して考えるものと理解しておこう。

図-2『大札幌市區域及地域設定畧図 附公園廣路計画図』(文資)
当図は都市計画に関する地図で、この地図だけに「熊谷法華」の地名がある。

 実は多くの人々が、この都市計画区域の設定を行政区域の変更と混同して考えていた。新聞の投書によると、近く札幌市の都市計画区域が決定されるということになると、その区域内に入ると予想される村では、村会での明年度予算の道路開削等を一切見合わせるとよいと信じているという。そしてその認識を批判して、行政区域と計画区域の違いを説明している(北タイ 大14・1・11)。そのため六月の支庁長市長会議で、道庁から都市計画区域と行政区域は、その意義を異にするものであることが注意事項として示された(支庁長市長会議書類 大11~14)。
 また、この都市計画区域については市民からも様々な考えが表明された。たとえば円山・山鼻方面の道路や街区画が乱雑になっているとの市民の投書があった(北タイ 大13・1・22)が、それに対して札幌の碁盤の目状への批判と共に円山・山鼻方面だけでなく琴似も都市計画の考慮範囲にすべきであるという投書がなされている(北タイ 大13・1・27)。
 また『札幌市史 政治行政篇』(昭28)では、区域を決定する考え方として、「専ら産業的見地から札幌市勢力圏を考え、その勢力圏をもって都市計画区域としたもの」「人口を基本として市と経済上特に密接な関係を有する区域を推定して計画区域としたもの」、さらに具体的に区域を示して「三方を山に囲まれた高燥地真駒内は市の高級住宅地として理想的であるので」区域内に含めるというもの等を紹介している(三一九頁)。『札幌市史 政治行政篇』のこのあたりの記述は、札幌市の都市計画に関係する部署(都市計画係または計画係)で執筆されている(札幌市創建八十周年自治五十周年記念札幌市史編集文書綴)ので、行政側が集約した考え方がこのようなものであったと思われる。