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昭和初期の土木事業の展開

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 札幌市に都市計画法が適用され、昭和十年代になると実際の都市計画事業が進められる。しかし道路の改修や道路網の整備、上下水道整備計画、公園の整備など社会資本の整備は、もちろん区制施行以降、順次整備されてきた。しかしそれらの事業は札幌市制が施行され、都市計画法が施行されるとかなり様変わりする。
 札幌市の予算に見る土木関係のおもな費目は表11①~⑤のようになっている。大正十二年(一九二三)~昭和二十年(一九四五)では、土木関係の予算の札幌市予算総計に占める割合は、一・八五~四四・二三パーセントである。非常に大きく推移する理由は、都市計画の策定にともない都市計画事業としての名目がなくても、都市を経営するために社会資本を整備する必要とそれを求める市民の意識が高まったこと、昭和初期の不況期に失業者救済事業として多くの土木事業が施行されたことなどによる。
表-11-① 札幌市土木費関係予算表
札幌市年間予算土木関係合計土木関係比率
大11
 121,442,261円246,144円17.07%
 131,564,469293,91718.79
 141,587,253242,80915.30
 151,996,585538,97526.99
昭 22,322,490609,59026.25
  32,285,701604,73126.46
  42,641,475571,95621.65
  52,216,733322,35014.54
  62,129,827233,85410.98
  72,968,656922,51531.08
  83,669,495956,28926.06
  93,068,176885,62628.86
 104,709,0682,082,61244.23
 114,029,3911,320,00532.76
 123,134,51372,5382.31
 133,654,328773,2685.40
 142,971,010227,6047.66
 153,163,780104,2263.29
 163,254,565106,6693.28
 174,293,531107,5642.51
 186,176,758114,4941.85
 195,613,425466,3428.31
 205,639,517389,1026.90

表-11-② 札幌市土木費 (経常費) (円)
款/土木費道路修繕費橋梁修繕費暗渠修繕費大下水修繕費小下水修繕費測量費治水費悪水路修繕費
大1110,0141,862285484734
 12122,45133,3421,81612,45320,96729,7002,193
 13141,77957,0712,67010,00523,52422,5332,9982,593
 14134,08149,0222,0978,34012,34621,8122,3655,080
 15103,05860,2145,3231,8463,9442,3656,087
昭 2112,32168,0572,5263,0083,9041,9549,467
  3122,83987,0163,4822,100*4,2252,3252,616
  4138,76292,1963,5161,4001,9402,2465,120
  5123,72076,4185,2001,0001,6642,2463,300
  6103,46055,5425,5008501,2672,1193,564
  792,46850,1652,0378001,1361,9143,564
  873,77430,0402,0507201,0961,9143,264
  983,17133,8305,3017201,2172,0423,610
 1085,06635,5614,8437201,2172,0494,147
 1162,08616,9154,5756701,1671,8763,922
 1263,82017,3824,1156111,1671,8763,770
 1363,91918,5806776121,0282,1513,220
 1471,04121,9621,5005329142,2754,200
 1575,51122,5041,5005329142,5194,200
 1678,75326,0492,0005329082,6054,200
 1789,27021,7957,3005607542,9176,055
 1894,64422,0305,000*下水道修繕費7863,8234,500

表-11-③ 札幌市土木費 (臨時費) (円)
款/
土木費
道路開削費橋梁架換費大下水新設費小下水新設費暗渠新設費道路改良費大下水路改良費橋梁新設費橋梁保護費暗渠改良費治水費悪水路改良費悪水路工事費
大114,8233,072521,689
 12123,69333,8461,90015,04123,4541,70747,745
 13152,13834,90935087,78626,9912,102
 14108,72820,64121,93322,1153,24727,04613,746
 1574,87218,7885,54650,538
昭 266,53918,0205,67640,2422,601
  345,45613,5843,64323,4794,750
  474,48813,4433,2609,9761,38041,588
  55,9892,5892,500
  622,3945007,282*25012,562
  712,2775,6645,013
  821,5159,7949,240
  913,4551,7927,080
 1013,5467,2052,213
 119,3562,4542,890
 128,7182,6002,106
 1342,2982,4713,45012,27620,300
 1431,7813,1004,00014,9805,500
 1528,7152,9506,85010,1152,800
 1627,91618,6003,050
 1718,2948,0004,6441,050
 1819,8502,30012,150*側溝築造費

表-11-④ 札幌市土木費 (臨時費中特別事業費) (円)
下水道費側溝費橋梁費道路改良費上水道費上水道布設費上水道給水工事費給水措置工事費一条橋架換費
大15192,762168,283
昭 2248,191182,539
  3245,879181,5579,000
  4174,196175,5109,000
  582,056110,585
  666,60041,400
  7112,00068,00074,770563,000
  8157,40094,600609,000
  9112,00068,000609,000
 10112,00068,0001,389,000415,000
 11716,000410,000122,563
 12
 1391,051
 14124,782

表-11-⑤ 札幌市土木費 (昭和19~20年)
〔経常費〕(円)
款/土木費道路維持費道路修繕費橋梁修繕費等治水費側溝及下水下水浚渫
昭19121,6701,85021,4904,4924,5532,3002,000
 20134,5381,85019,4004,6005,3795,0001,800
〔臨時費〕(円)
款/土木費道路新設費道路改良費橋梁架換費治水堤防新設改良費悪水路新設改良費建物移築工事費
昭19344,6724,9002,50010,0002,2003,5003,500
 20254,56424,7004,000
①~⑤各年度『札幌市予算書』より作成。

 この時期の費目はおおむね前時代と同様である。しかし新たに登場したもので特徴的なものは、臨時費中に計上されている下水道費本年度支出額、側溝費本年度支出額、上水道費関係の本年度支出額の費目である。これらは開拓使が札幌を建設して以来の生活に密接に関連する諸施設の大幅な改編である。
 下水道は、生活排水を、明治四年以来つくられていた小下水や明治十八年以降開削された大下水を利用して排出することから、新たに下水と側溝で排水するという大改革である。この工事の過程で、札幌県時代に開削され、札幌市民に新川として親しまれていた西五丁目を流れていた大下水が、暗渠となって消滅した。
 ついでこれまで市内の井戸水に頼っていた飲料水や生活用水を上水道で賄うことになった。これは、明治中頃には井戸の近くにある便所から滲出していた屎尿により非衛生的であると指摘されたこともあり、下水設備同様に明治末の青木区長以来の懸案事業でもあった。
 さらにもう一つ費目の名称からは判断できないが、経常費中の道路修繕、臨時費中の道路改良が特徴的である。まず道路修繕は、砂利の敷き詰めが道路修繕であった。しかし砂利が不揃いで通行に不便であったため、大正十一年以降は「篩砂利」を利用した敷き詰めや「水締マガダム鋪装」を採用するようになった。また道路改良は、大正十三年の道庁前道路の舗装を皮切りとした、市内主要道路の舗装化と歩車道の区別をする工事である。この二つの事業から、同じ施設であっても、その質の向上を目指すようになったことがわかる。
 これらの諸事業は、札幌市が都市として実際に発展するための基本的な諸施設として位置付けられる事業であり、都市計画事業と題されていないが、都市計画を実現する事業であり、都市整備事業そのものである。
 このようにこの時期の土木事業は、開拓使以来の古い札幌から脱皮し、太平洋戦争後大発展をする札幌の土木的基礎を築いた時代である。確かに戦後は、新たな技術発展による舗装の仕方や工事の仕方、自動車社会の深化にともなう都市整備の仕方が全く違うものになる。しかし、昭和初期にも札幌は、様々な土木事業の展開で、それまでの札幌とは全く様変わりしたのである。