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桑園幼稚園

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 大正十二年九月には、当時、北海道帝国大学農学部教授であった新島善直がキリスト教主義に基づく幼稚園として、北七条西一三丁目に桑園幼稚園を設立した。同幼稚園の前身は幼児の宗教教育に関心を抱いていた時任和歌が、北辰教会牧師の小野村林蔵の意向を受け、九年二月に自宅で開設した日曜学校である(桑園幼稚園 60年のあゆみ)。同幼稚園は「日曜学校、幼稚園、伝道の三つの目的を果たす」(同前)施設として位置づけられていた。

写真-14 桑園幼稚園園舎(大12)

 前掲『60年のあゆみ』から同幼稚園の特色などを紹介しておこう。同幼稚園の園舎は洋風の木造亜鉛葺き二階建で、その費用は新島の夫人栄子の手作りケーキのバザーや料理講習会の益金などによって調達した。同幼稚園では早くからピアノや組み合わせ自在な半月形の机を導入したり、冬期保育用として室内に砂場を設置したりするなど指導方法に工夫を凝らしていた。また、遊戯室の各の下半分には新島自身が下絵を描いた、それぞれ異なる刺繡のカーテンを掛けていた。卒園者の一人はそれについて「ゆめがあり、たのしいもので」あったと回想している。そのなかの一枚は次のような絵柄であった。「草原に、小さな虫かごを持った子が、両手を上にあげ、一人の子は、細い竹竿を肩にし、妹の手をつないでいます。空にはちぎれ雲が遊び、赤トンボがとびかっています」。当時としてはメルヘンの世界を彷彿とさせる、実にユニークな試みであったといえよう。