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昭和二十五年度予算の編成

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 当年度予算における最大の焦点は、シャウプ勧告にもとづく地方財政、とりわけ市町村財政の強化策としてうちだされた地方税法の改正と地方配付税に代わる地方財政平衡交付金制度の創設であり、この二つの改革によって市の歳入構造は大きく変貌することになった。そして市は、この制度改革を受けて、昭和二十五年度予算を初年度とする「新規事業五年計画」を策定する。
 この計画によれば、二十五年度~二十九年度の五年度で、(一)道路舗装・河川改修・下水道新設等の土木関係費四億三八〇〇万円(二〇・九パーセント)、(二)学校新増築費三億六九〇〇万円(一七・六パーセント)、(三)住宅建設費三億四三〇〇万円(一六・四パーセント)、(四)警察消防施設の拡充費一億三一〇〇万円(六・三パーセント)=以上一般会計分、(五)市電軌道の拡張や電車購入等市営交通の整備費三億二五〇〇万円(一五・五パーセント)、(六)市立病院改築事業費一億二五〇〇万円(六・〇パーセント)、(七)水道事業一億五二〇〇万円(七・三パーセント)=以上特別会計分、を投じるというもので、その総工費は二〇億九一〇〇万円にのぼった(新規事業五年計画案 総括表)。
 二十五年度予算は、同計画の初年度にあたり、市は一般会計歳入の六〇パーセントをしめる市税について、市民税を前年度の六倍の六三〇〇万円、道税付加税を一・七倍の五億二七〇〇万円と見積り、その他都市計画税などを加えた市税の当初予算総額は七億一八〇〇万円に達した(表3)。また同年度予算執行中の八月には地方税制が改正され、市は市民税を四億七〇〇万円(所得割額三億五二〇〇万円、均等割額五五〇〇万円)、固定資産税を二億二〇〇万円と試算している(道新 昭25・8・16)。
 この税制改正による市民の税負担の増加については、(一)夫婦と子供三人で二十四年度の給与所得が一七万円の家庭で五二〇〇円、(二)夫婦二人で給与所得が八万円の場合二一六六円という調査があり、平均的給与所得者の市税負担は五倍程度に膨らむことになった(事業所得者の負担も一・五~三・五倍に)。ただ地方自治庁は、こうした市民税と固定資産税の大幅増額の反面、所得税は相当に減税されるので、この点を考慮すれば市民負担は二十四年度よりむしろ軽減されるという主張をおこなっている(道新 昭25・4・1、8・1)。
 しかしこのような市税の増徴は、その納付をめぐって納税窓口に市民の苦情が殺到したため、市は分割払いを検討することになった(市民税は、二十六年度から「特別徴収制度」によって給与所得からの天引き納付が始まる)。また当年度の第一期(納付期限十月三十一日)市民税調定額は一億二〇〇〇万円であったが、期限の四日前になってもわずか七〇〇万円しか納入されず、この他に国庫支出金五〇〇〇万円、道補助金七〇〇万円、使用料手数料四〇〇〇万円等の減収分を合わせると、十月末の時点で二億円の歳入不足が発生した(道新 昭25・10・17、10・27)。
 加えて地方配付税も五〇〇万円程減額されている(表3)。なお二十五年度予算では、国から地方への補助金と配付税の一部が平衡交付金に組替えられて交付された。
 歳出の主要項目は、一般会計では、小学校の新設費(鉄筋コンクリートの標準小学校新築)、PTA会費負担の代替などで一億三〇〇〇万円、道路の舗装及び新設改良、除雪、災害復旧費で八八〇〇万円、警察消防施設の充実費で二六〇〇万円、市営住宅建設費で二五〇〇万円など、五年計画に沿って諸経費が計上された。特別会計では、交通事業で市電の車両購入費七八〇〇万円、市立病院改築費一五〇〇万円、水道管増設費二二〇〇万円などが盛り込まれた(道新 昭25・3・7)。
 このうち道路整備事業では、当年度から道路の復旧と砂利道の舗装を強化するための五カ年計画を立て、今年度と来年度はそれぞれ二〇〇〇万円の予算を投入して特に修理が必要な道路の改修をおこなうこととした(道新 昭25・8・4)。
 二十六年度予算は、前年度から始まった五年計画の第二年度にあたるが、予算策定の時点で改定を余儀なくされた。この点に関して高田市長は、昨年度はシャウプ勧告によって地方税法が改正され、地方財政平衡交付金制度が成立をみたが、税収は改正以前と大差がないにもかかわらず、歳出は、市税徴収費、給与改定による人件費など経常費の増加が顕著になったため、標準課率による徴税を維持するには五カ年計画を一年繰り延べて六年とし、本年度は学校、道路、国際都市化、産業の振興と失業救済を重点施策にする、と説明した(高田富與 続市政私記)。実際二十六年度の平衡交付金は前年度の配付税の半額になっている(表1・表3)。その後この計画は二十七、二十八年度にも財政上の理由で改定を受けている(三章一節)。