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旧労働組合法下の組織状況

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 二十一年五月のメーデー集会後も、札幌勤労署には連日組合結成の届け出が続いた(道新 昭21・5・8)。そのほとんどが、欧米や戦前期日本でも主流だった企業の壁を越えた横断的職業別・職能別組合とは異なり、構成員を各企業、官業・官公署内常用従業員に限定した、事業所産報と似通った企業別・事業所別の職員・労務(工員)混合組合であった。さらに、職員そのものが現場労働者である金融・保険業や教育及び公務・団体などのように、「筋肉労働者ばかりでなく頭脳労働者が組合の全構成員をなしている」組合が多いのも、札幌の「特に注目すべき」特徴であった(道新 同前)。
 二十二年末現在の市内操業事業所総数は一万一二一〇で、規模別にみると五人未満の事業所が製造工業で七五パーセントを占め、商業では八七パーセントにも達する一方、従業員構成では非現業が現業を上回っていた(表20)。その後の組合結成状況を表18でみると、二十三年には、二十一年比で組合数が三・四倍、組合員数は二・五倍になった。しかし産業別では、大多数が零細規模の製造業で組合数が三倍、組合員数が一・六倍程度に対し、公務団体自由の組合が一〇倍、組合員数も七倍に急増し、実数でも運輸通信業がこれについだ。その他のうち三六〇〇人は進駐軍関係組合で、商業では、百貨店のほか金融・保険などの支社・支店組合が増加し、建設業の多くは職員組合である。経営母体別では、国の出先機関や官業・官公署、団体、公立学校の組織率が圧倒的に高く、進駐軍要員組合を含めると、官公系組合員数が全体の五〇パーセントを大きく超えていたのである。その過程で、官公労を含めて大手の事業所別組合は企業別・経営体別に統合され、さらに全国産業別単一組織や連合体結成に向けた動きも急速に進んだが、実質的には企業内常用従業員に限定される日本型労働組合の原型ができあがっていったのは札幌も例外ではなかった。
表-20 昭和22年10月札幌市の産業別規模別事業所数及び従業者数

種別

産業
事業所総数操業事業所総数従業者規模別事業所数従業者総数
(人)
現業非現業別
1~
4人
5~
29
30~
99
100人
以上
現業
(人)
非現業
(人)
農業(農家を除く)1717510217610076
林業4337141832684324360
水産業1917105220262140
第一次産業小計79712933721,062486576
鉱業77662630731,1871231,064
建設工業747721459196481811,0157,6393,376
製造業3,5963,4582,5947401012327,24624,5102,736
第二次産業小計4,4204,2453,0799661564439,44832,2727,176
ガス電気水道業2320312231,076569507
商業4,2294,1123,57549337715,13715,137
金融業16015569612232,8942,894
運輸通信業42441730471142811,09410,364730
サービス業1,1971,025838175124,3644,364
自由業9138887371132998,4598,459
公務団体270265611672986,4806,480
その他の産業1512921101101
第三次産業小計7,2316,8945,5961,0941465849,60510,93338,672
合計11,73011,2108,7042,09330910490,11543,69146,424
『第1回日本統計年鑑』及び『札幌市勢要覧』(昭24)より作成。

 こうした潮流の中で、共産、社会両党による組合連合組織結成に向けた主導権争いが、道内でも札幌を舞台に昭和二十一年から激しさを増した。一月十九日、社会党系の総同盟北海道連合会準備会が開催されたが(道新 昭21・1・22)、前年十一月に北海道労働組合会議準備会(北労会議)を組織していた共産党は、「社会党の労働運動屋共は(中略)総同盟支部準備会をでっち上げ(中略)組合戦線の分裂を策してゐる」と激しく非難し(北海赤旗 第二号)、一月二十日、北労会議を北海道労働組合連盟(労組連盟、六六組合・組織人員八万人)と改称した。炭鉱労組主体の労組連盟には、札幌地域からも道新従組や手稲鉱山労組、夕張製作所札幌工場従組のほか、結成準備段階の帝繊や札幌日通・食糧営団・札幌交通・朝日スレート・札幌自由・札幌一般・北海道土建など、合わせて一一「組合」が加盟し(北海赤旗 同前)、二十一年九月、労組連盟は北海道産別に発展解消した。