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公娼制度廃止令

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 戦争は女性にも多くの犠牲を強いたが、一方において敗戦は女性に多くの恩恵をもたらしたことも事実である。婦人参政権、男女平等、家族制度廃止等々、長い間苦しめられた売春問題においても一歩前進がみられた。二十一年一月二十一日、GHQは公娼制度の存続はデモクラシーの理想に反すると、「公娼の廃止に関する覚書」を発表した。日本政府では、これより少し前の一月十二日、公娼制度廃止に関する内務省通達を出している。一月十五日から実施の通達内容は、「貸座敷及娼妓は之を廃業せしめ之等廃業者に付いては私娼として稼業継続を認め公娼制度を廃止致す」というものだったため、当時貸座敷指定地域をそのまま私娼黙認地域として認めた程度で完全になくなったわけではないが、一歩前進には違いはなかった。二十年四月末現在で全国の業者総数三一六五軒、娼妓一万四一七人という調査データさえあることから、廃止令に基づいて本人の希望または個々の事情により私娼に転換する向きは十分考えられた。