平成三年のバブル経済崩壊以降、札幌市財政も税収の落ち込みや累積債務の増加が大きくなり、桂市政はより一層の行財政改革を推進していった。六年一月、行政運営効率化委員会が設置され、十月に同委員会によって「ダイナミック・リファイン・プログラム」(DR)が策定された。DRは「行政運営の質の向上と効率化の推進」を目的とし、組織の活性化、事務事業の効率化、市民サービスの向上の三つのテーマに取り組むものであった。十一月に各局区に局区DR推進本部を設置して職員参加による課題の抽出と分類整理を行い、七年四月同委員会の統括推進本部から担当部局に各課題を提示し、本格的な検討が開始された(ダイナミックリファインプログラム最終報告書)。
一方、地方自治体に新たな行政改革大綱の策定を要請する自治省次官通達(六年十月)を受けて、七年四月、札幌市行政改革懇話会が設置された。同懇話会は九月に提言を答申し、市は十一月に「新行政改革大綱」を策定した。これは、①総合的な運営体制(縦割り組織の大胆な再編とネットワーク化、人事行政制度の改革、近隣市町村との連携強化)、②効率的な行政運営(施設の複合化、適正な定員管理、全庁的な事務改善)、③社会経済情勢の変化と行政需要の変化への柔軟な対応(事業の抜本的な見直し、適正な市民負担、民間委託、出資団体の統廃合と活性化)、④市民と一体となったあたたかな行政(区の組織改革と機能強化、市民の利用しやすい施設づくり、市民参加による市政の推進など)、の四つを推進しようとするものであった。これにより、DRは「新行政改革大綱」を反映するようにステップアップが図られ、八年四月、「全庁共通課題の局区内運動」が開始された。
九年六月、政府は「財政構造改革の推進方策」を決定した。これは十年度の公共事業を七パーセント削減し、社会保障、地方一般歳出を対前年度マイナスにするとともに、地方交付税と地方債の歳出抑制を求めるものであった。札幌市も十年度以降三〇〇億円を超える財源不足が見込まれ(十九期小史)、緊急に大胆な行財政改革を図る必要があった。そこで市は九年七月から事業再評価プログラムの取り組みを開始した。これは第三次長総五年計画も含めて市の事務事業全般を多角的な視点から見直し、必要性の薄い事業は思い切った縮小、廃止を行おうとするもので、アウトカムを重視する事業評価システムというツールが用いられた点に特徴がある(「事業評価システム」実施要領 平13)。
十年二月、市はDRと事業再評価プログラムを総括した上で、「行財政改革推進計画」を策定し、今後五年間で職員数、管理職ポストの五パーセント削減、市債発行額の過去五年間比一〇パーセント削減を打ち出した。DRは最終的に一四七五項目の課題について検討を加え、数値的には六五二人分の人員削減効果、約一四一億円分の財政効果が得られたと試算され、十年三月末をもって終了した(ダイナミックリファインプログラム最終報告書)。