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変貌する春闘と賃金上昇率の低下

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 昭和六十二年(一九八七)十一月、中央では民間労組による「連合」が、平成元年(一九八九)には総評も解散して官民統合の「(新)連合」が発足、同時に統一労組懇系組合により「全労連」が誕生した。元年、北海道でも民間「連合北海道」が結成され、十一月には「道労連」が、そして翌二年二月、民間「連合」と官公労組とを統合して「連合北海道」統一大会を開催し、道内の主要労働運動組織は連合北海道と道労連が並立した(後述)。道内労働組合員総数の三五パーセントを占める札幌でも、同年に札幌地区労連が、平成五年に札幌地区労と札幌地区同盟が解散して札幌地区連合が誕生する(後述)。昭和五十九年以来続いた札幌会場の北海道統一メーデー集会は平成二年、ともに「統一」を標榜しながら連合北海道系と道労連系に分裂し(表16)、民間・官公労など大産別組合や札幌地区の労働運動は平成二年から四年の過渡期を経て、中立組合などを除き、すべて連合系(連合北海道・札幌地区連合)と全労連系(道労連・札幌地区労連)とに二分された。
表-16 北海道中央メーデー集会参加状況の推移
<統一開催期>昭和59~平成1年
種別労働団体統一集会
年次参加人員会場
昭5922,000大通西7・8丁目広場
 6022,000同上
 6126,000同上
 6220,000同上
 6319,500同上
平 113,500同上
 
<再分離開催期>平成2~10年
種別連合北海道系北海道労連系
年次参加人員会場参加人員会場
平 28,500大通西8丁目広場3,000中島公園自由広場
  38,800同上3,000同上
  49,500同上3,000同上
  540,000同上9,000中島公園
  640,000同上8,000同上
  727,000同上8,000同上
  827,000同上8,000同上
  927,000同上8,000同上
 1013,000同上9,000同上
昭和59年~平成4年は『資料北海道労働運動史』各年版、平成5年以降は『道新』各年5月1日付夕刊または2日付より作成。平成5年以降の参加人員は主催者発表の数値。

 平成二年春闘で連合北海道は、「九〇北海道春季生活闘争連絡会」を新たに発足させ、①賃金引き上げ、②労働時間短縮、③政策制度改善を「三位一体」要求として掲げた。産別・企業別支援のほか、全道決起集会や中小企業・パート「なんでも一一〇番」、さらに、札幌地区労が実施してきた「中小・パート労働者連帯行動デー総決起集会」などを実施したが、かつての波状的大規模ストライキは影を潜め、道や札幌市、道労働基準局、道経済五団体(平成三年から六団体)に対する労働時間短縮など労働条件改善やパートタイム労働法、育児休業法制定などの政策制度要請行動を強化した。札幌地区春闘共闘会議も、①積極的な賃上げ、②賃金格差是正、③労働時間短縮・週休二日制実現、④合理化反対と雇用確保、⑤パート・派遣労働者を含む未組織労働者の組織化などを重点課題として「市民春闘路線」を強め、独自の「中小・パート労働者決起集会」や「民間中小労組要求貫徹4・18札幌地区集会」、市への要求行動などを継続した(札幌地区労資料)。また、道労連系は「北海道九〇国民春闘共闘委員会」を組織し、①大幅賃上げ、②労働時間短縮、③合理化反対と雇用確保、④消費税廃止や米自由化反対などを主要課題に位置づけた。「二・二三札幌総行動」として道や道労働基準局、道運輸局などのほか道経営者協会等に対する制度・政策要請行動を実施し、「三・二五全国統一行動」として、札幌など一五会場で約六六〇〇人が参加して気勢を上げ春闘の盛り上げを図り、国鉄闘争強化の特別決議も行われた(資料北海道労働運動史)。
 一方、北海道の経済や雇用情勢は、昭和六十年(一九八五)代以降も北洋漁業の縮減、石炭・鉄鋼・造船不況、さらに国鉄解体などで全国との格差が拡大した。道内の労働組合員数も、昭和六十年を境に大幅に減少するなかで札幌市のみが増加を続けていたが、これも平成四年を境に減少・横這いに転じた(後述)。企業動向も六十二年には大型公共投資などで幾分改善されたが、同年春闘における道内四三二社の賃上げ率は六年連続で全国を下回り、全国民間の三・五六パーセント(平均八二七五円)よりも低い春闘史上最低の三・二パーセントを記録し、金額でも六〇三一円(三〇〇人未満規模では五九七六円)となった。その後、北海道経済は平成三年に入ってまたも減速し、企業倒産や合理化(リストラ)などによる失業者も増加する一方、有効求人倍率も五年以降さらに急速に低下した(表17)。全国的な経済不況下で一時的に復活した賃金上昇率も、「積極的賃上げ」方針にもかかわらず、同年春闘以降急速に低下に転じ、十年には定期昇給の確保が精一杯となった(表18)。「空洞化する春闘」、「逆春闘」という言葉が飛び交うようになり(道新 平12・2・29)、市内の勤労者一人あたり月平均賃金は四〇万円を割り込み、十一年には、年末一時金の低落も重なって平成元年の水準に低下し、勤労者一人あたり月平均賃金が一世帯あたり平均消費支出金額に並んだ(表19)。
表-17 求職・求人数及び有効求職・求人倍率の推移
種別札幌市全道の年有効求人倍率
(倍)
 1カ月
平均有効求職者数
1カ月
平均有効求人数
年間有効求人倍率
年次(倍)うち常用倍率
平231,03222,0590.71 0.74
 332,92622,3380.680.77
 435,42220,8570.590.64
 539,04421,2240.540.54
 640,67722,4900.550.54
 742,18622,0510.520.410.51
 843,22924,9320.580.470.57
 948,28823,8310.490.390.49
 1055,05323,2540.420.280.44
 1154,42722,9100.420.290.44
 1254,80426,7930.490.380.48
札幌市は『市統計書』による石狩市・当別町・厚田村・北広島市を含む数値、全道の平2年-平9年は石狩支庁『商工労働観光概観』、平10年以降は内閣府『地域経済レポート2001』による。有効求人倍率は、いずれも新規学卒者を除き常用パートタイムを含む。

表-18 春闘における賃金値上げ状況の推移(昭和60年~平成12年)
項目石狩支庁管内全道
 
年次
調査企業数妥結前の平均賃金賃上げ要求額賃上げ妥結額賃上げ率
(%)
賃上げ妥結額賃上げ率
(%)
昭57127152,48519,33110,0846.6110,5026.78
 59120171,31614,8297,0664.126,9814.12
 61125187,34616,5587,3193.926,9003.84
 63138196,81114,9717,7173.927,2153.74
平 2134203,92918,61410,3945.109,8274.83
  4133219,60319,70510,6484.859,9344.64
  6103252,40215,7037,6003.016,9183.08
  8100228,17012,3226,2992.766,1492.69
 1082248,7249,6503,6871.485,3052.23
 12109248,7249,8914,2351.704,0741.70
石狩支庁『商工労働観光概況』昭63、平5、12年版による。調査対象は札幌市を含む従業員規模1,000人未満の労働組合のある民間企業で、賃上げ妥結額は定期昇給込みの金額。

表-19 札幌市の賃金・消費支出額・労働時間等の動向(昭和60~平成12年)
  種別
年次
勤労者1人当たり
月平均賃金
勤労者1世帯
月平均消費支出金額
勤労者年1人
平均労働時間
勤労者月1人
平均労働時間
1カ月当たり
出勤日数
時間時間
昭60345,290289,0732,096174.722.5
 62363,275300,9122,100175.022.5
平 1365,572303,9682,092174.422.3
  2378,254319,3092,032169.321.8
  3402,799310,9972,016168.021.3
  4405,985341,4541,948162.320.7
  5403,934323,3441,894157.820.2
  6417,083341,1751,877156.420.1
  7421,285328,3211,906158.820.5
  8382,698332,4421,897158.120.6
  9393,754342,2511,896157.920.4
 10373,668340,5141,886157.220.5
 11369,132364,8171,848154.020.0
 12384,069328,5331,844153.720.1
『札幌市統計書』より作成。勤労者平均賃金は、各年12月末の常用労働者が30人以上の民間事業所のうち、おおむね130~150事業所(約3万6,000~4万8,000人)で現金で支払われた給与を12カ月で除した単純平均額。勤労者世帯対象は、各年65~95世帯、家族数おおむね3.4~3.8人の有職者人員1.2~1.5人の世帯。労働時間及び出勤日数は「毎月勤労統計調査」による。