ビューア該当ページ

育休法・均等法等の改正

571 ~ 574 / 1053ページ
 日本の官公庁で最初に育児休職制度を採用したのは電電公社(現NTT)で、職場内託児所が設置されても育児退職が四〇パーセントを超す実態に、四年の討議を経て昭和四十年にスタートした。表40-1はその札幌における実施状況である。制度の内容は生後二年までの子をもつ希望者に六カ月、一年、一年六カ月の無給育児休職を選ばせ、定期昇給はストップするが休職期間の半分を勤続年数に加算し、原則として元の職場に復帰させるとした(ブレストかけて)。
表-40 育児休業者数
1 電電公社育児休職制度利用者数
札幌全国札幌全国
昭403・・昭46161,890
 422・・ 47152,160
 4310・・ 48132,510
 4441,600 49222,810
 45141,650 50112,820
『ブレストかけて』より。
 
2 札幌市立学校教職員の育児休業者数
育児休業者数育児休業者数育児休業者数
昭55115昭63132平 8141
 56124平 1128  9144
 57・・  2135 10・・
 58122  3130 11120
 59122  4・・(男1) 1288
 60154  590(男1) 13124
 61・・  6・・ 14105
 62194  797 15114
平成9年までは札幌市教職員組合『婦人部総会議案』1981~1997年度、同『女性部白書』1997年度に、平成11年からは市教委教職員課による。

 日教組は昭和四十一年「選択制、先任権、有給制」の三原則に立つ女子教職員育児休暇の立法化を決定して運動をすすめ、五十年六月、いわゆる育休法(義務教育諸学校等の女子教育職員及び医療施設・社会福祉施設等の看護婦・保母等の育児休業に関する法律)が成立した。翌年四月から実施されるが、休業期間の半分を勤務期間に算定するものの無給で、代替者は臨時職員など課題が多く、婦人部は権利を行使する中で改善に取り組んだ。
 表40-2は札幌市における実施状況である。札教組では行使者、代替者の懇談会を開き、妊娠中の労働軽減、保育所・学童保育や身分保障などについて市教委と、保育補助費について公立学校共済組合と交渉を重ねた。また生理休暇の行使率が全道より低い札幌では異常出産率が高いことを指摘し、母性保護に関する権利行使を高めるよう呼びかけた(札教組婦人部総会議案、婦人部白書)。
 六十二年八月、四野党共同の「新育児休業法案」が参議院に提出され、平成三年五月、政府案を与野党一致で可決した。給与保障は実現しないが、男女を問わず出産後一年間の育児休業を申請行使できることになり、札幌市教員の父親育休取得第一号が美香保小学校で誕生した(北教組史 第七集)。七年には給与の二五パーセントが、共済組合から支給されるようになった(札教組女性部総会議案)。
 平成七年(一九九五)、いわゆる育児・介護休業法(育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)に改正されて、制度導入は全企業の義務になった。九年には男女雇用機会均等法が全面的に改正され、募集などの差別禁止、職場でのセクハラ防止の配慮は義務規定とされた。一方十年に労働基準法が改正され、深夜及び休日・時間外労働に対する女子保護規定が撤廃された。これら改正三法は、十一年四月施行となった。さらに同年六月、労働者派遣法が改正され(派遣労働の原則的自由化)、翌月施行された。
 各種改正法令実施を目前にした十一年二月、札幌市市民局は市内約三四〇〇社の企業の意識調査を実施した(回答は約一五〇〇社)。まず従業員の育児休業利用の実態は、女性が七九事業所、二七〇人、男性が二事業所(人数は不明)、介護休業利用では、女性が一一事業所、一九人、男性が九事業所、一一人であった。育児休業制度の規則化は四八パーセント、介護休業制度は規則・慣習合わせて二五パーセントであり、制度定着には代替確保が最重要視された。
 均等法、労基法の改正点についての認識は、「募集・採用の差別禁止」「セクハラ禁止」が九〇パーセント、女子保護規定解消が七七パーセント、母性保護規定強化が六二パーセント、ポジティブ・アクション(積極的差別是正措置)が四四パーセントほどであった。しかし具体的な取り組みは遅く、セクハラ防止のために指針作成、パンフ配布、社員教育、相談窓口設置など実施しているのは五パーセント以下、今後検討するが三〇パーセント程度だった。
 さらに改正均等法への対応として女性に対する企業の姿勢は、「積極的募集・採用をする」が三二パーセント、「職域拡大・配属」四三パーセント、「教育訓練の充実」二五パーセント、「昇進・登用」三七パーセント、「管理職増加」二〇パーセントの回答にとどまった。また従業員に期待する資質・能力全一〇項目について、男性に対しては全項目で六五パーセント以上期待しているのに対し、女性に対してはリーダー・企画開発・交渉・論理的表現の四項目で四〇パーセント未満しか期待していなかった(男女共同参画に関する企業の意識調査 報告書)。企業の職場環境はいまだに平等から遠い感があった。