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社会教育の展開条件

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 本節の叙述にあたっては、とくに以下の諸点に留意している。
 第一に、この期のわが国の社会教育生涯学習への転回を基調としながら進み、札幌市の社会教育もそれと軌を一にしているといえるが、戦後の社会教育が全国的に公民館を基底としてきたのとは異なり、市の社会教育は戦後期以来多様な地域施設を活用しながら独自の展開を示してきた。そこでこのような社会教育生涯学習の幕開けと展開にあたってどのような特徴を示してきたか、という視点から検証する。
 第二に、この時期の札幌市の政治、経済、社会の動向を条件づけてきた要因として市への人口の一極集中を挙げることができるが、このことが市の社会教育生涯学習にどのような影響を与えてきたかということを視野に入れる必要がある。表5はその一端を示している。この時期の北海道の人口が大枠において変わらず、むしろ最近になって微減している中で、市の人口は平成十二年(二〇〇〇)には全道の約三分の一を占めるに至っている。このような市への人口の一極集中は、郡部(町村)における人口減少とほぼ対をなして進行している。
  表-5 札幌市の人口の推移(単位:千人)
年次北海道(a)札幌市(b)b/a(%)町村
昭254,2953137.31,992
 355,03952310.42,108
 455,1841,01019.41,736
 555,5751,40125.11,593
平 25,6431,61728.71,476
  75,6921,75730.81,442
 125,6831,82232.11,293
国勢調査によって作成。

 このような人口の動向は社会教育にかかわる学習人口の動向にも影響を与えており、社会教育施設の市への集中化とほぼ軌を一にしている。この過程で市に設立された社会教育施設の中には、近隣市町村、道央圏、さらにはそれを超える広域的な利用を含むものも少なくない。
 第三に、札幌市が昭和四十七年(一九七二)に政令指定都市になったことは、その後の社会教育行政や市民による地域ごとの社会教育活動の展開にとっても重要な節目となった。なかでも区民センターの開設は、社会教育施設ならびに類似施設の態様にも少なからず影響を与えた。この中で、市の社会教育生涯学習の地域性にどのような変化が見られたかということに注目しなければならない。
 以上を総じて、この時期の札幌市の社会教育生涯学習の特徴は〝後発先進性〟および〝一極集中〟ということに示されており、さらにこの二つの特徴にともなう積極面と新たな課題の発生について検証する必要がある。