昭和五十年以降平成十六年(一九七五~二〇〇四年)に至る札幌の美術は、北海道立近代美術館をはじめとする美術館の相次ぐ開館やギャラリーの増加など美術環境の整備が急速に進んだのに伴い、創作や鑑賞の機会が増大したばかりでなく、地域社会にも広く深く浸透しさまざまなかたちで人々の生活の質の向上に貢献するようになった。
そうしたなかで公募団体展は一時期の公募展離れ現象を乗り越え、北海道の美術を形成する軸の一つとして確かな存在感を示した。昭和五十年は北海道美術協会(道展)が五〇周年、全道美術協会(全道展)が三〇周年、新北海道美術(協)会(新道展)が二〇周年と、各団体にとって記念すべき節目の年であり、しかもこの時点ですでに、北海道美術作家協会(道美展、昭和四十四年創立)が新たに誕生していたことは、全道規模の公募団体展が合わせて四つという北海道ならではの盛況ぶりとみてよい。
平成に入ってからもこれら四団体は、余暇利用の推進や高齢者社会を反映して、美術教室やサークルで学んだ女性や高齢者による出品が年々増加し、作品内容においては随所に次代の新展開を予兆させつつ推移している。具象傾向が根強い道展では従来の写実的な表現を深化させる一方で、対象のとらえ方や画面の組立などに清新な造形思考を働かせた行き方も少なくない。専門(プロ)画家の育成と中央進出の登竜門を創立以来の指針とする全道展では、とりわけ版画部門に顕著な自由闊達な雰囲気、抽象構造の彫刻群に共通する未知の空間構築に挑む創意などが一貫して目につく。さらに新道展は創立会員に続く世代が力を付けており、幅広いジャンルをカバーする道美展でも、当初からの課題である質的な向上を目指して粘り強い取り組みが実践されている。