[解説]

上田の早苗
東御市文化財保護審議会 寺島隆史

 上田城下原町の商人で、学者としても知られた成沢寛経(百合舎主人、1797~1868)が、幕末期に上田を中心とする小県郡の歴史について著わした書。上田地方の最初のまとまった郷土誌といえるものです。上田という地名を苗字とする中世上田氏についての検討から始まって、真田氏、上田城の築城ほかについて、伝承を含めた興味深い記事が綴られています。この写本自体は、序文に見えるように大正2年(1913)に、やはり上田の人で「花月文庫」で知られる飯島茂経(保作、花月)が筆写したものです。ここにも記されているように、原著に追加されたとみられる部分もあります。