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生徒の学歴 生徒の当校入学前の履歴は区々(くく:まちまち)にして、単に高等小学校を終了し直に入学せる者、或は実業に従事せし者、他の種の学校より転ぜし者、又官公署に奉職せし者等雑然相混淆せり。即ち単に高等小学を卒へて入学せし人員と、高等小学を卒へ然る後他の種の学校或は業務を履習せしものと、殆ど相半するの状態にして、従ひて生徒の学力の相違甚しく教授上不便を感ずる事少なからざるも、寧(むし)ろ後者の多からん事を希望するものにして、諸外邦に於ける実業学校の如きは、入学前一定期間実務に従事したる経歴あることを入学条件とせるが如き者多し。而して其重なる事由は、
1、生徒は其修業上に趣味(おもしろみ)を感じ、従て熱心なること
2、理解力強くして学理と実際とを調和せしむる技能あること
3、従て半途(はんと:中途)退学等の少き事
4、卒業後実務に従事して応用の才識に富める事
等、種々なる利益多ければ、彼の唯(ただ)父兄の言に従ひ漫然入学したる者との間に顕著なる差違あるを見る。
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年齢 既に斯くの如し勢ひ年齢にも夥(おびただ)しき相違あり。同一学級に於ても其年齢15歳より24、5歳に至るが如き、懸隔は一見訓練上に支障あるが如きも、過去数年間の経験に徴し何等の弊害を認めず。却(かえっ)て生徒各個操行上に於ける欠缺(けんけつ:不足すること)は年少者に多きを見る。尚創立当時に於ては年齢の最大最少の差は現在よりも一層甚だしき者ありき。然れども平均年齢は過去10ヶ年間殆んど同一状態にあり、又生徒の戸主或は長男の数、僅かに全員の3割3分にして、実業学校として比較的下位にあるは、卒業生一般の章に於て述ぶるが如く学校の性質上已むを得ざる事情なりとす。
生徒府県別 生徒出身地は県内にありては1市14郡にして殆んど各郡より入学者を見る。就中(なかんずく)西筑摩、埴科(はにしな)最も多く、小県(ちいさがた)、南安曇等之に次ぐ。更に他府県出身者にありては1府10県に及び岐阜、石川、山梨最も多し。近時他府県出身者の入学数増加し、従来他府県人が全員に対し1割9分なりし者一躍3割強に激変したるは交通の便を得たると、一面(いちめん:全体として)各府県森林並に治水事業の声高きの致す所なるべし。左に在学生徒に関する統計一般を掲げん。
1 生徒出身地及員数 在学生徒出身地、本県人と他府県人との比較を掲ぐれば、
(注 「生徒出身地及員数」の表は原本ビューワ49コマを参照)
2 父兄の職業 父兄職業中勿論(もちろん)農業大多数を占め、官公吏亦比較的多きが如し
(注 「父兄の職業」の表は原本ビューワ49コマを参照))
3 戸主及長男 在学生徒にして戸主及長男た
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るもの及び其然らざる者との百分率を示せば次表の如し
(注 「在学生の内戸主及長男の割合」の表は原本ビューワ50コマを参照))
4 年齢 今、卒業生の年齢と両々比較に便せんが為に、現在学校生徒の卒業の際の年齢を予想すれば次表の如し
(注 「在学生の卒業予定時の年齢」の表は原本ビューワ50コマを参照)
5 入学前の履歴 在学生の入学前履歴及単に高等小学卒業せる者と、高等小学校終了後他の経歴を有するものとの百分率を示せば次の如し
(注 「在学生の入学前の履歴」の表は原本ビューワ50コマを参照)
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