豊浦地区は、第2種大澗漁港とサンタロナカセ岬に挟まれた内湾に面し、静穏度の高い水面で覆われている。豊浦地区と日浦地区は、サンタロナカセ岬から1500メートル強の断崖絶壁の続く海岸で、かつては素堀のトンネルがあって公共交通機関のバスが往来しこの海岸の名勝として持て囃された。新国道トンネル「サンタロトンネル」の開通に伴って旧トンネルの利用が少なくなり、また、素堀トンネルの経年風化による崩落があり、最近は通行禁止となっている。
大澗漁港の西側、豊浦地区は湾の1番深いところに位置し、漁港から続く岩礁帯はほどよく湾を包み込み、湾を風浪から防いで静穏度を保っている。内湾には夏期は、オオセグロカモメ、ウミネコなどが翼を休めているが、冬期には冬鳥のコクガン、カルガモ、マガモ、シノリガモ、ホオジロガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロなどが越冬している。
また、夏期には見られない、ミソサザイなどが後背地の細い急な流れの縁にいて越冬している。
ミソサザイ 本種は、スズメ目ミソサザイ科ミソサザイ属で体長11センチの小鳥で、主に渓流の近くにいて繁殖している。また、雪解け水で増水した渓流の中の岩に氷が輝き、川岸のアシの先の水滴に朝日が輝く頃、渓流の上にかざした枯れ枝の上で、本種のものとは思われない甲高い声で囀る。囀りは複雑で真似ることは困難である。しかし、その囀りは一度耳にした者は忘れることは出来ない。まさに春の女神のお目覚めの一声と言って良い。本町の海岸から山深い渓流や河川流の縁の樹木や枯れ草の株の中を歩き回っている。
厳冬期には、民家の縁の下にも潜りこみ寒さを避けていることもある。本町では普通に越冬している。
イソヒヨドリ スズメ目ツグミ科イソヒヨドリ属、ヒヨドリと名がつけられヒヨドリの仲間のように思われるが全然別種の鳥である。
本種は、海岸などの崖地にいて岩の隙間などで繁殖している。繁殖期には美しい声を響かせて囀り、時には囀りながら両翼を広げ、震わせながら岩場から岩場へと滑翔するのを観察出来る。
雄は上面は青く、胸から腹、下尾筒に掛けて赤く、海岸の防波堤の波返しの上で囀る姿は十分に目を引く。イソヒヨドリとは名ばかりで、高山の岩壁でも生息繁殖している。かつて駒ヶ岳、砂原岳の岩壁で繁殖したのを観察している。海抜0メートルから、約1000メートルの高度差をものともしない生命力の強さに感心したものである。シマアオジが、高度差が限りなく0メートルに近い草原でなければ生息、繁殖出来ないということから見ても、その逞しさは卓越している。また、本種は、渡り鳥であるが、ここ恵山町では一部が残留し、春早く海岸地帯で囀るものと思われる。本町全域の海岸線で普通に見られる鳥である。
カモメ 本種は、ウミネコより小さいチドリ目カモメ科カモメ属カモメで、正真正銘のカモメといえる。
恵山町では冬期、尻岸内川沖から、豊浦までの海面に多数越冬するのを観察している。文献によっては、旅鳥と記し、厳寒期には北海道には少ないと記されているが、冬期、他のカモメ類の少なくなった海上で本種を毎年観察している。恵山町では年によっては、400近い群れが純群に近い姿で海上に漂っている。
日浦地区は、日浦岬灯台の東側にあって、サンタロナカセ岬と結ぶ内湾の部落である。西には亀田郡戸井町と本町を隔てる通称御殿山があり、日浦トンネルで戸井町と通じている。集落は海に面し、一部が日浦小学校と共に日浦川に沿って斜面を上っている。日浦川上流には日浦地区の簡易上水道の施設があり深い谷底になっている。
狭い谷のせいか、繁殖期に観察できる野鳥の種は少ない。
ヤブサメ ウグイスと共にその特徴ある鳴き声を知る人は多い。体長11センチメートル。非常に小さい。
地面近くの下草の上やササなどの茎を利用し移動するため発見はなかなか難しい。しかし、繁殖期最中には、非常に目立つ行動をし、1本の木を囀りながら登りその姿を観察することができる。2001年6月27日、日浦川中流部で、巣立ったばかりの幼鳥4羽を観察した。4羽は、嘴の付根が黄色く、しきりに1本のカラマツの根元に戯れるようにぐるぐる飛び回っていた。
ノスリ・カラ類の渡り 2001年11月、恵山町日浦・御殿山尾根上にて、ノスリ・カラ類の渡りを観察した。強い西風に煽られるように尾根を次々と飛び越えて、戸井町側に風を避ける様に下って行くノスリは、1時間で15羽を越えた。一方カラ類は、御殿山山麓からしきりに鳴きながら尾根を越えて行った。中には、身体に止まったり、ぶつかっては一声残して先へ急ぐ様に飛び去った。同行の諸氏は、初めての体験に度肝を抜かれ、只ただ見送るばかりであった。双眼鏡で見送るとカラ類は、高く風に舞う木の葉のように西の空に消えていった。
エゾライチョウ キジ目ライチョウ科エゾライチョウ属、北海道RDB希少種、国RDB情報不足、狩猟鳥、2000年4月20日午前4時、恵山町柏野、林道ふるさと恵山線でエゾライチョウを観察した。
良く暖かい南向きの斜面や、道路脇を遊歩する個体、或いはフアミリーを観察したものである。しかし、近年本種との出会いが極端に少なくなり、フアミリーと出会えることもなくなった。
本種は、余り丈の高い下草を好まないようで、スギ、トドマツ、カラマツ林の縁などで良く見掛けた。
亀田郡南茅部町で、ホオノキ、ミズナラ、ブナなどの広葉樹林で、子連れの成鳥を追ったが林内で見失った。本種が狩猟鳥ゆえに減少することがないように種の保存に尽くすべきと考える。