(2)縄文尖底土器

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土器  縄文時代前期初頭には、早期後半に全道一円に広がった平底の絡条体圧痕文・組紐圧痕文土器群に続いて、胎土に繊維をふくんだ縄文が多く施文された尖底もしくは丸底の土器群が出現する。それまでにはみられなかった、胎土に多量の繊維を混ぜる技術伝統をもった土器で、縄文、撚糸文、竹管文、押型文などの文様で飾られた。
 道南には函館市春日町遺跡を標式とした、土器全面に縄文や撚糸文が施文された春日町式土器が分布する(第17図)。この仲間には椴法華村で出土した竹管文が多用されたトドホッケ式土器、縄文と半裁竹管で描かれた連続弧文が施文された石川野式土器がある。
 同じ頃、噴火湾岸から石狩低地帯には道南に分布した土器と類似した、砲弾形の尖底土器に粗い斜行縄文が施文された中野式土器が分布する。道東・道北には矢羽状、格子目状の押型文と撚糸文が施文された押型文土器や、ロープを土器に巻きつけて施文したような文様が施文された綱文式土器が使用されていた。
 前の時期にくらべて大型な尖底や丸底土器には例外なく繊維が含まれており、撚糸が含まれたものも見られる。土器が大型になるにつれて形を保つのが難しくなり、焼く前の補強のために繊維を混ぜたものと考えられる。

第17図 前期初頭の縄文尖底土器(函館市春日町遺跡
児玉作左衞門・大場利夫「函館市春日町出土の遺物について」『北方文化研究報告』9、1954

 
石器  春日町式に伴う石器は貝殻尖底土器群に伴ったものと大差なく、つまみつきナイフ、二等辺三角形の石鏃、石錐、各種のスクレーパー、磨製石斧、自然礫の一端に磨り跡のある磨石などがある。中野式に伴う石器も春日町式と大差がないが、北海道式石冠(せきかん)とよばれている、礫を細かく敲いてお供え餅型に作りだし底面を平らな擦り面とした磨石(すりいし)、敲石、石皿、大型な石錘などがあり、北海道式石冠が多量に出土するのが特徴である。北海道式石冠は、土器を製作する際に粘土に繊維を混ぜ合わせるためや、石皿と共にユリ科など植物の根茎や堅果類からデンプンを採取するため使用された可能性も考えられる。