(1)新たな水産振興計画 -尻岸内町総合開発計画より-

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 第2次長期計画の策定 昭和32年(1957)3月、尻岸内村はようやく戦後の混乱期から脱し、総合的な基本計画をまとめ、道知事から地域指定を受け事業に着手した。
 すなわち『尻岸内村農山漁村振興特別助成事業計画』である。これは以後10か年にわたる村行政の指針ともなった。漁業についても同様であった。
 当時の尻岸内村助役の三好信一は、昭和42年4月の地方統一選挙に出馬、その栄冠を勝ち得て町長に就任、当面する諸問題を解決後、前掲の、過去10年の尻岸内町の指針ともなった『農山漁村振興特別助成事業計画』の評価と反省の上に立ち、尻岸内町の新たなビジョンを描き『尻岸内町総合開発計画』を策定した。
 なお、この策定にあたっては、同43年5月27日、総合開発計画委員会を設置、前町長の前田時太郎氏が専門委員に就任し、内容について逐一検討を重ねた。
 以下、この尻岸内町総合開発計画より漁業に関する事項を抜粋し記す。
 
 昭和43年の『尻岸内町総合開発計画』より
第三 水産業振興計画
(一)生産基盤の整備
 本町は現状において、純漁村を形成しているが、他産業暫定稼働する就業者と地元第二次産業に季節的に稼働する階層が、まだ含まれている実情にあり、このため地先海面での乏しい資源の中での生産量は、極めて零細的な生産にとどまっている。
 このような事態からして、現在より少ない人数でより高い生産を上げ、その就業者の所得を増大することが急務であると思考される。この具体的な方向としては、
イ 漁港及び関連道路、簡易船揚場等の生産基盤を早期に整備完了すること。
ロ 漁場の広域的、合理的利用を図り、漁民の純化に伴う一人当たりの利用面積の拡大を図る等、漁場利用の改善により生産を高めること。
ハ 限定された地先漁場には、資源量が希薄であるがため、一経営体当たりの採算性が低く、新規に漁場造成を必要とする。近年底曳機船漁業等の沿岸進入により、極度に漁場の荒廃が目立ち、従って著しく資源が減少しているが、この漁場資源復活のために大型漁礁を投入を実施し、漁場造成を図るほか、昆布・適地に「のり」を中心とする海藻類養殖を推進するため、養殖センターの建設を図ること。
ニ 〇~五トン階層の漁船を中心に、いか釣、延縄、一本釣、採藻等の組合わせによる営漁方式を確立し、又、大型漁船による恵山魚田の利用・開発及び、集団操業における通信体制を推進する等、生産体制の確立を図る。
ホ 函館及び道央方面への流通圏確立のため、冷蔵トラック等の輸送体制の整備、鮮魚の蓄養施設設置による弾力的出荷、山背泊漁港を中心とする広域的利用を前提として、製氷冷蔵施設の整備、大澗漁港を中心とする総合加工を極力推進する。
 
(二)漁業経営の近代化
 今日の地先海面の漁業、魚類・水産生物・こんぶなどの海藻漁業に頼っている現状では、一経営体当たりの生産向上は望めない。また、生産高の大きな割合を示す回遊資源は、その年の自然環境に大きく左右される。これまで比較的安定していた「イカ」の動向についても、昨今の実情から不安定な要素を拭いきれない。
この現状を打開するためには、
イ 現在「獲る漁業から育てる漁業へ」と叫ばれて浅海開発事業を行っているが、これを、更に積極的に進めければならない。具体的にはこんぶ・のり等海藻類の養殖技術を開発、企業化し(二次加工など)、安定性の高い養殖漁業を積極的に進め、漁業経営の安定・向上を図る。
ロ 魚族・回遊資源については漁船の近代化・小型漁船の建改造、特に近代機器(魚群探知器・イカ釣ロボなど)の導入を促進し、回遊状況を掌握し積極的に沖合・遠洋へ進出する経営を図る。
 
(三)水産物流通加工の合理化
 近年「するめいか」生産の減を脱し、他の資源の二次加工を以って生産価値を向上させる方向に漸進しつつあり、その施設の整備充実・利用に関心を寄せている。特に恵山魚田は生産高の減少傾向がみられ、噴火湾海域での「すけそうだら」資源を確保して、一次、二次加工を行うなど「いか資源」の補完として、他に資源・漁獲物を求めることも計画に入れ、漁業所得の増収を図らなければと考える。
 具体的な方策として、
イ 水産加工業者の組織化を強化するとともに、北海道輸加連系統による原魚の導入、製品の流通ルートを確保する。販売については販売窓口を集約し、共同制度の確立を促進する。
ロ 製品については購買地域の実情、要求に対応する高次元加工と、需要を十分賄うため、冷蔵庫の併設を促進する。
ハ 特産の「いか」については、生いかの鮮度を保ち加工するため、簡易乾燥施設の大幅普及を図る。
 
 以上、これらの事業を推進するための金融面については、当面、『尻岸内町中小企業特別融資制度』の保証融資を極力促進する。