「広報えさん」昭和62年(1987)2月号に町道日浦~女那川線、道道「函館恵山線」に昇格決定という記事が載っている。以下その本文である。
昨年(昭和六十一)六月、豊浦バイパス完成により、国道(二七八号線)から町道路線となっていました日浦~女那川間(延長四・二九キロメートル)が、昭和六十二年一月十二日付で、「道道函館恵山線」に昇格が決定しましたので、町道日浦女那川線は路線廃止となりました。
道道函館恵山線とは、日浦から、旧国道(278号線)の日浦トンネル(1~7号)通称日浦洞門をくぐり、豊浦・大澗・中浜の市街地を通り女那川・川上から日和山の峠を越え函館市に入り蛾眉野・鉄山・亀尾・湯川に至る延長23.4キロの路線であり、地域住民にとって函館往来のもう1つの重要な道路(ルート)である。特に豊浦・大澗・中浜間は市街地であり、児童生徒の登下校や住民の通行の最も多い区間である。従って、日浦・女那川間は豊浦バイパス完成後も、日浦トンネル箇所も含め(当区間は車掌も乗務)、路線バス(函館バス)が運行していた。また、この区間の日浦・豊浦間は良質の昆布が豊富な海域であり、日常的に産業道路として使われていた。しかし、日浦トンネル(1~7号)や柱状節理の崖は大規模な崩落の恐れがある危険地帯であり、現に落石は頻繁に起きている。これには、巨額な道路維持・改良費が必要であり、町道に指定されても維持管理できない状態にあり、町はこの道道函館恵山線昇格をおおいに歓迎した。
その後、この区間は日常的維持程度のままで、地元の産業道路として定期バス路線として、また特異な景観を楽しむ観光道路としても注目されてきた。
風光明媚な日浦・豊浦海岸(平成7年撮影)
『道道』函館恵山線日浦トンネル区間通行止
ところが、平成8年(1996)8月、函館土木現業所は道道函館恵山線(日浦)トンネル5か所を通行止とした。理由は、この区間のトンネルが、道の実施した緊急点検で安全対策の最も急がれる「ランク1」に指定されたからである。これに対して函館土木現業所と日浦漁協との間で調整が難航し、それが1年もの間続いた。
平成9年(1997)9月28日付の北海道新聞は、このことについて、次のようなセンセーショナルな大見出しで報道している。
恵山の道道危険トンネル『通行止め』めぐり平行線一年
安全か漁業か
函館土現「使わないのが最善」
地元漁協「コンブ漁できぬ」反発
また、同じような内容で、時事通信社も平成9年10月1日「官庁速報・アンテナ」に報道している。以下、その全文を記す。
「官庁速報」平成9年10月1日 ◎アンテナ 時事通信社
★…「通行止め」めぐり平行線(北海道)
二〇人の犠牲者を出した昨年(平成八年)二月の豊浜トンネル(国道二二九号線)崩落事故を受け、北海道が実施した道内トンネルの緊急点検で安全対策の緊急度が最も高い「対応方針一」となった渡島管内恵山町の「日浦トンネル」。道はすぐにも同トンネルの「通行止め」を提案したが、地元漁協の反対で一年以上も結論が先送りされたままとなっている。その間に、後志管内島牧村で豊浜トンネル事故を上回る規模のトンネル崩落が発生。相次ぐトンネルの大崩落に、その担当者は「何とか早急に手を打たないと」と頭を抱えている。
日浦トンネルは道道函館恵山線に一号から七号まで七カ所(見かけは八か所)あり、いずれも素掘で長さ数十メートル。これまで崩落したトンネルと同様に、海に切り立った崖を縫うように作られている。このうちの五カ所を、道は①道路上部にせり出した岩 ②岩の亀裂 ③雨や地震で崩落の可能性−などの理由で安全対策の緊急度が最も高いランクに指定した。既に防護ネットや夜間通行止めなどの応急対策は済ませたが、この道道に平行して国道二七八号線が通っていることから、道は昨年(平成八年)八月に恵山町と地元漁協に日浦トンネルの通行止めを提案した。
ところが地元漁協は「漁場に行けなくなり、死活問題だ」として反対を表明。海岸線が岩場なので船では行けず、また、国道は漁場に通じていないためだ。目下、道と漁協の協議では、▽トンネルを通行止めにしないため、沖合に架設道路を造り、危険な岩を撤去 ▽通行止めにしてう回ルートを新設−などの案が浮上しているが、経費がかかるなど問題点も多く、今のところ見通しは立っていない。
道は「長期的に見るとトンネルを使わないことがベストだし、地元の人だけが使うものへの多額の投資は疑問だ」としつつも、打開策を求めて漁協・町との話し合いを続ける意向だ。地元漁民にとって「漁業(生活)」か「安全(生命)」かの難しい問題だが、道も、崩落事故がいつ起こるか分からないだけに焦りの色を見せている。
函館恵山線−日浦トンネルの斜面・トンネル状況と対策方針
平成8年(1996年)以降、北海道函館土木現業所は調査を進める一方、恵山町・地元日浦漁協など関係機関と何回もの聞き取りや協議を重ね、今後の対策方針を練り、結局、“廃道か”との瀬戸際にあった道道函館恵山線−日浦・豊浦区間は、地元の強い要望、特にこの区間が良質の天然マコンブの豊富な海域であることなど、生活・生産活動の重要性が再認識され災害防除工事の実施が決定した。以下に主な内容を記す。