2、『壬申八月巡回御用神社取調』第2巻より、尻岸内村神社調

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 『申八月巡回御用神社取調』第2巻より、郷土尻岸内村の神社調全文を記す。
 
渡島国亀田郡尻岸内村>   戸数 五拾五軒
               人口 三百廿一人
               内男百七拾五人 女百四拾六人
△八幡宮  木像・衣冠弓箭ヲ持立像、白衣丸竜ノ地紋ニ彩色ス。
      此侭可レ存也。
      木祠一尺五寸 白木造、拝殿三間ニ五間 神門三基社地五拾間四方
      起原不詳 明治三庚午八月十三日再造
 八幡宮社地末社
 稲荷祠  木像 翁稲荷・此木像ヲ廃シ、神鏡、和幣ノ内ヲ以テ改祭スベシ。
      拝殿弐間方 神門二基
      起原不詳
 此分木祠合祀
 同村末社
 西宮大神 石像(事代主命)・此石像ヲ廃シ同断(改祭スベシ)
      破祠六尺方 神門一基
      此両祠八幡宮合祠可レ然見込ニ付、十月四日神職村役人へ申聞受書為二差出一候事。
尻岸内枝郷日浦>      戸数 拾七軒
               人口 九十七人
               内男四十八人 女四十九人
△稲荷社  木像・男躰白狐ニ乗 曖昧物可レ廃。改祭前同断(改祭スベシ)
      神爾是ヲ以テ神体トスベし。
      祠四尺 拝殿二間半四方 神門三基
      社地間口四間 奥行五間
      起原不詳 慶応元丑年再造の棟札アリ。
 合祀
 嚴嶋神 和幣
      但、合殿の書上ニテ別祠ニ付、此分合祀申付候事。
尻岸内枝郷古武井>     戸数 四十一軒
               人口 弐百四十四人
               内男百弐十五人 女百十九人
△海神   木像・立像 手ニ球ヲ持、紅衣竜頭ヲ頂ク、可レ廃。改祭の分前論。
      木祠一尺 拝殿九尺二間 神門二基
      社地間口三間 奥行拾間
      起原不詳
 同社境内
 稲成神  木像 女躰・陀枳尼(ダキニ)カ、可レ廃事。改祭同断
      但、海神社へ合祀可レ為レ致事。
尻岸内枝郷根田内>  戸数 七拾四軒
            人口 四百九十八人
            内男弐百七十四人 女弐百弐十四人
△嚴嶋神  和幣
      祠一尺 拝殿二間方 神門二基
      社地間口五間 奥行拾八間
      起原不分明
 同村末社
 稲成神  木像 翁稲荷・廃物 改祭同断
      但、嚴嶋社合祀ノ請書為二差出一候事。
箱館称名寺末浄土宗地蔵庵存光
      今上皇帝位牌形一、村役人ヘ渡シ箱館庁ヘ可レ納。
      神鏡一、称名寺ヘ可二 差出一申付候事。
 
 以上菊池の調査は、神社沿革・祭祀神体・社殿形態・神仏混淆の有無、その他、詳細にわたり実施され克明に記述されている。そして、それらについての考察、特に祭祀神体神の実体・神仏混淆の有無から廃棄すべき(偶像・曖昧物と見なされた)木像、石像などを明記し、社殿・祠は、1つの村・枝郷に1か所として合祀・改祭を指示・指令している。
 また「神爾、和幣」を神体とするよう指令している。以下に指示・指令された具体的事項を記す。
 
 尻岸内村 ・八幡宮の木像(祭祀神体・衣冠弓箭ヲ持立像、白衣丸竜ノ地紋ニ彩色ス)はそのまま存在させる。
      ・稲荷祠の木像の翁稲荷は廃棄し、神鏡、和幣を以テ改めて祭ること。
      ・西宮大神の石像の事代主命は廃棄し、改めて祭ること。
      ・稲荷祠・西宮大神祠は八幡宮に合祀見込みとし10月4日、神職村役人は受諾したことを届けること。
 枝郷日浦 ・稲荷社の木像(祭祀神体・男躰白狐ニ乗)曖昧物であり廃棄し、神爾1を神体として改めて祭ること。
      ・嚴嶋神の和幣・別祠とせず稲荷社に合祀すること。
 枝郷古武井海神社の木像(祭祀神体・立像、手ニ球ヲ持、紅衣竜頭ヲ頂ク)廃棄し、前と同じく(神爾1を神体として)改めて祭ること。
      ・稲成神の木像(祭祀神体・女躰、陀枳尼(ダキニ)か…)廃棄し、前と同じように改めて祭ること。但し、海神社へ合祀すること。
 枝郷根田内・嚴嶋神 和幣(祭祀神体)
       稲成神 木像(祭祀神体 翁稲荷)廃棄し改めて祭ること。
       但、嚴嶋社合祀の請書を差し出すこと。
      ・<寺院>箱館称名寺末浄土宗地蔵庵存光
      ・今上皇帝位牌は村役人ヘ渡し箱館庁ヘ納めること。
      ・神鏡1は称名寺ヘ差し出すこと。