これらの軍部及び北海道会・地域住民の強い要望は鉄道省の認めるところとなり、こうして昭和十二年十月から戸井線の建設が開始されることになったのである。ところが函館市・戸井村・尻岸内村・椴法華村などの住民の中には、戸井線(函館から戸井まで鉄道敷設決定)を森村まで延長することを望む者さえ出てきた。しかし北海道会が鉄道大臣に強く求めていた椴法華までの延長さえ無理のようであり、住民の願いは次第にせばまり、せめて尻岸内村古武井まででも延長して欲しいという切望に変わっていった。
『尻岸内町史』によれば戸井線に関する次のような資料が記されている。
一、国有鉄道戸井線延長ニ関スル件
(理由)戸井線ハ函館戸井間ノ鉄道ニシテ昭和十一年度着手同十四年度開通ノ路線ナルガ更ニ本村字古武井迄延長セントスルモノナリ。
当地方ハ道内有数ノ好漁場ニシテ殊ニモ鰮・昆布・柔魚ノ産額多ク又農鉱林資ノ資源ニ富フ有ナル経済線タリ。而シテ古武井迄延長スルニ於テハ其利用区域タルヤ戸井村ノ一部尻岸内・椴法華・尾札部ノ全村及臼尻村ノ一部即チ五ケ村約三百方粁ノ広大ナル区域ニシテ生産総額実ニ二百五十万円ニ達ス。尚延長セントスル区域ハ要塞地帯ノ第二区及第三区ニ属シ鉄道ノ延長ハ軍上ヨリスルモ誠ニ急施ヲ要スル次第ナリ。
然モ戸井ハ地勢並要塞施設ノ関係上終点トシテ各種ノ設備誠ニ困難ノ地ニシテ戸井線ヲ本村字古武井迄延長スルニ於テハ終点トシテ施設ヲ完備スルコトヲ前記ノ関係ト相俟ツテ急速延長ヲ必要トスル次第ナリ。
(経過)昭和十一年五月三日関係各方面ニ請願セリ。
一、昭和十三年二月十八日請願書貴衆両院ニ於テ可決セラル
一、昭和十三年七月末北海道建設事務所ヨリ経済調査ニ来村