第1図 南茅部町の地質図(5万分の1地質図幅、東海と尾札部による)
北海道南西部渡島半島の地質の特徴は「東北日本の延長と考えられる。いわゆる古生層を基盤とし、その上に直接新第三紀下階の緑色凝灰岩からなる福山層に始まる、厚い緑色凝灰岩層を主とする累層が重なり、現在に至るまで火山活動の著しい地域である」(橋本亘・二〇万分の一北海道地質図)とされている。このように、渡島半島はいわゆる古生層を基盤とすると考えられていたが、その後、松前半島大千軒岳、知内川支流住川の古生層石灰岩から石炭紀さんごおよび紡錘虫が見出され(吉田尚、山口昇一・地質学雑誌七三巻)、また、石炭紀コノドントが抽出されており(吉田尚、青木ちえ・地質調査所月報二三巻)、また、上磯町峩朗の石灰岩の調査から、いわゆる古生層を中生層と考えられ(湊正雄、山本哲也・地質学雑誌六七巻)(坂上、南川、川島・地学雑誌七八巻)るようになった。したがって、渡島半島のいわゆる古生層は、一部は古生層、一部は中生層として取り扱われるようになってきているといえる。
南茅部町尾札部地区では、先第三紀層として戸井層が見出され、「粘板岩、チャート、石灰岩よりなっており(五万分の一地質図幅・尾札部)、中生層である可能性がつよい」とされている。東海地区においても粘板岩よりなる戸井層が報告されているが、「化石を産しないので、地質時代は明らかにされていない」(五万分の一地質図幅・東海)。