村の重立(おもだち)

401 ~ 401 / 1210ページ
 明治のご一新によって、新しい政策が次つぎにだされた。蝦夷地の暮しに慣れた郷土の人たちに与えた衝撃は大きかった。なかでも、多くの文盲の漁民にとって、時代の変化を告げるお達し文は、その都度さまざまな戸惑いとなったのは事実である。このような急激な時代の変動期に、村の指導者の言動、物事の判断が、村の将来を大きく左右することになる。
 代々、尾札部会所の頭取職を勤めてきた飯田屋は、若くして家督を継いだ六代目与五左衛門の代であった。そして黒鷲の〓今津家の文蔵・甚蔵の父子、吉川喜三郎、杉谷金兵衛らが力を合わせて新しい世の夜明けに対処した。
 臼尻村には、老いてなお矍鑠(かくしゃく)たる〓小川屋幸吉が、時代の趨勢を鋭く捉え、よく村民の行く道を示した。
 また、副戸長役をつとめる野村長吉、村用掛野村次郎兵衛、赤石歓三郎。熊村には山田又吉、佐々木粂五郎、成田市助がいた。川汲に小板屋久兵衛、椴法花に佐々木弥三郎、木直には小田原幸作がいた。
 二五〇年の泰平の世を変えて進む時代の変わり目の動きは、寸時も止まることがないほどの速さで動いた。