長濱は「ながはま」か「おさはま」か読みがなは不詳だが、箱館から恵山椴法花を過ぎる海岸は、断崖や嶮しい岬が続き、ようやくケンニチを過ぎる辺りから穏やかな渚の海浜がつづく。断崖を見てきた船方には、ここから長浜(ながはま)のつづく海浜と名付けた意味が分かる。
噴火湾から恵山に向かっての海路では、砂原海岸から鹿部海岸へとつづく大きな砂浜の前沖から、恵山に向かってヲサツベにきて長浜と呼ぶには当たらないだろう。
そしてこの長浜が真昆布の最高品といわれる銘柄「浜の内」の呼称につながる語源ともおもわれる。
松前随商録 寛政末年(一七八九~一八〇一)に
ヲサツベ 新井田金右衛門 支配
出産 昆布・苔・鰊・イリコ・干鱈・カシヘ
魚油・鮫・鱒・推葺・ヲットセイ・雑木
此處ゟ天明弐年ノ比(ころ)兜を献上す 温泉あり 萬病に吉 運上金百弐拾五両 安永中金弐百廿両 千嶋第一之昆布出る 三ヶ所 畠山多く五葉松第一の山也 ヲサツペノ内凡(およそ)十里余
小名 ヱサンザキ ミツナシ トトホウケ アイノトマリ
チャウシ ヲカシ(ツ) ウタライシ フルベ
キナヲシ ホキナヲシ ヒルカワユ ケンニツ
ヤキヲサツベ マケシカヨリ ツキアケ カツクミ
ショウツカワ イタキ ウシヂリ船掛ノ澗也 タマトマリ
ルルトマリ ケムシトマリ イソヤ クルワシリ
ホウロ サルイシ トコロ ミヽヱウタ
カムイトマリ シカベ スクノヱ ホンベツ
テケマ マツヤ
ヲサツ・ケンイチゟイタキ迄
長濱ト言
カヤベ 北見常五郎 支配
(市立函館図書館 所蔵)