明治一五年一月、臼尻村・尾札部村の村民六名に製造所を分貸することとし、製造期に委員を派遣して指導監督につとめさせている。
三月、開拓使が廃止され、函館県の所管となり、まもなく農商務省の所管に移された。
臼尻村・尾札部村の鱈肝油製造所は、開設発足の年から数年間、鱈漁の不振がつづき、原料が不足のため国内の大きな期待と需要に応じえなかった。
このとき、明治一一年、祝津村白鳥喜四郎が鱈の肝油製造を試み、また、明治一二年、札幌本庁でも後志国高島村で鱈の肝油の製造を試みた。
祝津、古平、岩内はともに鱈漁場の産地であり、鰊漁による大漁業者がいたので、漁業開発に取り組む資本力においても、郷土の近在に比べて優位にたった。
明治一三年、岡村製薬所は椴法華村と尾札部村で、独自に鱈の肝油製造事業をはじめたが、鱈漁の不振で原料不足のため、明治二一年、製造所を岩内に移した。
ほかに明治一九年、寿原肝油製造所は古平で開業、同二二年、積丹郡日司村に第一支場、増毛郡別苅に第二支場、苫前郡天売に第三支場を設置して鱈の肝油製造にあたった。
明治一〇年二月、郷土臼尻村で始められた北海道で最初の国内初の官業鱈肝油製造は、こうして時流に乗ることができなかったが、後志諸村では昭和のはじめまでその製造が続けられた。
鱈肝油製造所之分
一 建家 四棟
但別紙第壱号調書及二号繪図面四葉之通 印
一 地所 四ヶ所
但別紙第二号調書及甲号繪図面四葉之通 印
一 製造所貸下受書 壱括 今津甚蔵外三名ヨリ差出候分
一 備品製造器具類 壱冊
但別紙第三号調書之通
一 演舌書 壱冊
一 参考書類 壱袋
内
建物評價書 四通 壱括 木下佐吉外三名ヨリ差出候分
右之通及御引渡候也
旧函館支廳開拓使残務取扱
函館縣令 時任為基 印
明治十五年六月三十日
農商務省
派出員御中
(※21 A 六月二八日付文書の宛名に、農商務省 會計局 函館出張 南部則敏殿とある)
臼尻村三拾五番地
拝借人 赤石歓三郎
臼尻村鱈肝油製造場器具備品及價格調
品名 個数 價格 壱個当
壓搾器 弐組 金 四円 金 弐円
鉄蓋共 釜 大 六個 金四拾壱円四拾銭 金 六円五拾銭
鉄蓋共 釜 小 壱個 金 弐円
煎〓鍋 大 六個 金 六円六拾銭 金 壱円拾銭
仝 小 壱個 金 四拾銭 金
馬口鉄漏斗 三拾六個 金 九拾銭 金 弐銭五厘
斧 壱個 金 三拾銭
寒暖計 壱個 金 拾銭
錫鍍金柄杓 大小弐個 金 壱円 金 五拾銭
爼板 弐個 金 八銭 金 四銭
鍬 壱個 金 弐拾銭
鋸 壱個 金 拾銭
手桶 四個 金 弐拾銭 金 五銭
弐斗 空樽 六個 金 三拾銭 金 五銭
黒 硝子瓶 弐拾六個 金 弐拾六銭 金 壱銭
鉄葉 空罐 四拾五個 金 四円五拾銭 金 拾銭
曲柄杓 壱個 金 弐銭
柄杓 弐個 金 六銭 金 三銭
揚ケ笊 五個 金 五銭 金 壱銭
大笊 九個 金 四拾五銭 金 五銭
鉄火箸 弐個 金 拾銭 金 五銭
塵取 壱個 金 拾銭
荏樽 八個 金 四円 金 五拾銭
硝子 漏斗 弐個 金 三拾銭 金 拾五銭
[図]
茅部郡臼尻村臼尻
鱈肝油製造所建家
建坪拾五坪
拝借人 中村彦四郎
赤石勘三郎
大盥 壱個 金 壱円
出刃包丁 弐個 金 弐拾銭 金 拾銭
南京錠 壱個 金 三拾銭
行燈 壱個 金 弐拾銭
古時計 壱個 金 七拾五銭
杓子 四個 金 弐銭 金 五厘
計 三拾種 金 六拾九円八拾九銭
[図]
北図類一三六―四
茅部郡臼尻村字臼尻
鱈肝油製造所
官有地第二種
地坪 八拾坪
[図]
尾札部村支川汲三拾弐番地
拝借人 新井田元八
尾札部村支河波鱈肝油製造所器具備品及價格調
品名 個数 價格 壱個当リ
壓搾器 三組 金 六円 金 弐円
鉄釜 大 六個 金 拾弐円 金 弐円
仝 小 弐個 金 四円 金 弐円
煎〓鍋 六個 金 弐円四拾銭 金 四拾銭
仝 小 三個 金 壱円弐拾銭 金 四拾銭
ブリツキ 馬口鉄漏斗 八個 金 弐拾銭 金 弐銭五厘
出刃庖丁 弐個 金 弐拾銭 金 拾銭
斧 壱個 金 三拾銭
鉈 壱個 金 拾五銭
鍬 壱個 金 弐拾銭
鋸 壱個 金 拾銭
鉋 弐個 金 弐拾銭 金 拾銭
鑿 三個 金 三拾銭 金 拾銭
焼小手 壱個 金 拾五銭
寒暖計 壱個 金 弐拾五銭
錫鍍金柄杓 弐個 金 壱円
雪車 弐個 金 弐拾五銭
荏樽 拾八個 金 九円 金 五拾銭
弐斗樽 拾壱個 金 五拾五銭 金 五銭
大盥 壱個 金 壱円
火箸 壱個 金 五銭
手桶 三個 金 拾五銭 金 五銭
小盥 壱個 金 五銭
曲柄杓 大 弐個 金 五銭 金 弐銭五厘
大笊 拾壱個 金 五拾五銭 金 五銭
揚ヶ笊 拾個 金 拾銭 金 壱銭
黒硝子瓶 五拾五個 金 五拾五銭 金 壱銭
杓子 弐個 金 壱銭 金 五厘
硝子漏斗 弐個 金 三拾銭 金 拾五銭
権衡 壱個 金 弐円五拾銭
柄杓 九個 金 拾八銭 金 弐銭
莚 五拾七枚 金 弐円弐拾七銭 百枚ニ付金三円九拾八銭弐厘
行燈 壱個 金 弐拾銭
硯函 壱個 金 拾五銭
塵取 壱個 金 拾銭
土瓶 弐個 金 六銭 金 三銭
書函 壱個 金 拾銭
南京錠 壱個 金 三拾銭
計 三拾八個 金 四拾七円拾弐銭
[図]
茅部郡尾札部村字河汲(三二番地)
鱈肝油製造所建家
建坪 貳拾貳坪五合
拝借人 新井田元八
[図]
北図類一三六―二
茅部郡尾札部村字河汲
(三二番地)
鱈肝油製造所地所
官有地第二種
地坪 六拾八坪
[図]
[図]
茅部郡尾札部村尾札部
鱈肝油製造所建家
建坪 拾五坪
拝借人
尾札部六〇番地
今津甚蔵
[図]
北図類一三六―1
茅部郡尾札部村字尾札部
鱈肝油製造所 官有地第二種
地坪 七拾三坪
[図]
尾札部村六拾番地
拝借人 今津甚蔵
尾札部村鱈肝油製造場器具備品價格調
品名 個数 價格 壱個宛
粗製壓搾器附属共 弐組 金 五拾銭 金 弐拾五銭
煎〓鍋 六個 金 弐円四拾銭 金 四拾銭
鉄蓋共釜 六個 金 拾弐円 金 弐円
荏樽 拾九個 金 九円五拾銭 金 五拾銭
鑿 三個 金 弐拾弐銭 金 四銭
錫鍍柄杓 大小弐個 金 壱円 金 五拾銭
書函 壱個 金 拾銭
小盥 壱個 金 五銭
計 三十四種 金 三拾三円壱銭五厘
木直四拾四番地
拝借人 西谷徳太郎
外壱人
尾札部村支木直鱈肝油製造所器具備品及價格調
品名 個数 價格 壱個当リ
壓搾器附属共 弐組 金 四円 金 弐円
煎〓鍋 六個 金 弐円四拾銭 金 弐円
鉄釜 六個 金 拾弐円 金 弐円
錫鍍金柄杓 弐個 金 壱円 金 五拾銭
馬口鉄漏斗 五個 金 拾弐銭五厘 金 弐銭五厘
寒暖計 壱個 金 弐拾五銭
焼小手 壱個 金 拾五銭
出刃庖丁 弐個 金 弐拾銭 金 拾銭
砥石 弐個 金 四銭 金 弐銭
斧 壱個 金 三拾銭
小盥 壱個 金 五銭
鉈 壱個 金 拾五銭
古時計 壱個 金 七拾五銭
荏樽 拾九個 金 九円五拾銭
大盥 壱個 金 壱円
盤 壱個 金 五拾銭
弐斗空樽 九個 金 四拾五銭 金 五銭
大笊 九個 金 四拾五銭 金 五銭
揚ヶ笊 壱個 金 壱銭
曲柄杓 三個 金 六銭 金 弐銭
爼板 弐個 金 八銭 金 四銭
手桶 四個 金 弐拾銭 金 五銭
杓子 弐枚 金 壱銭 金 五厘
火箸 壱個 金 五銭
南京錠 壱個 金 三拾銭
硯函 壱個 金 拾五銭
書函 壱個 金 拾銭
計 弐拾七種 金 三拾四円弐拾七銭五厘
[図]
茅部郡尾札部村字木直
鱈肝油製造所建家
建坪 拾五坪
拝借人
木直四四番地
西谷徳太郎
沢村弟吉
[図]
北図類一三六―三
茅部郡尾札部村字木直 官有地第二種
鱈肝油製造所地所 地坪 六拾四坪
[図]
明治一九年 著名製造物概況
製造主 職工 製造額 概価
円
鱈肝油 後志国高島郡稲穂町 一 四〇 二三八石 二、八六一・〇〇〇
同 古平郡浜町 一 一〇 一一二 二、九三四・七五〇
同 岩内郡御鉾内町 一 六 六三 八四〇・〇〇〇
渡島国茅部郡尾札部村 一 二 一 一六・八〇〇
合計 四 五八 四一四 六、六五二・五五〇
前年合計 七 六二 四三一 八、九七一・八二二