昭和一〇年 川汲温泉絵葉書

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川汲温泉の絵葉書が袋入である。
 元南茅部高校長佐々木重元が、昭和一一年の夏休みに来村の折求めた川汲温泉絵葉書は四枚一組である。ほかに、再刷されてインクを変えたこか黒・青・セピアの三版がある。
 
 川汲温泉の案内
 交通の便は、函館湯の川間は電車二〇分、賃金一〇銭で、湯の川川汲温泉の間は自動車一時間二〇分、賃金一円六〇銭(一日四往復)であった。大沼・鹿部を経由すると鉄道・大沼電鉄・自動車の接続があり、約三時間で賃金二円である。
 川汲温泉の宿料は一二食で上二円、中一円五〇銭、並一円で、中(昼)食料は上八〇銭、中六〇銭、並四〇銭である。
 自炊湯治は入湯、室代、寝具、木炭、灯火料付で、一日七〇銭と記されている。
 
   川汲温泉   市街ヲ距ル十五町、自動車随時往復。新館落成完備
   無味無臭無色ノ温泉・湧出多量・□麻質斯・神經系諸症特効。川汲ノ里ヨリ川汲川ノ溪流ニ沿ウテ山道ヲ登ルコト十五町ニシテ川汲温泉ニ至ル。途中躑躅(ツジ)溪・琵琶滝ノ勝アリ。二層ノ温泉旅館溪谷ニ臨ミ櫻山ニ對シ巍然トシテ其ノ勝景ニアリ。之レ往昔一白鶴来ツテ入湯シ脚疾ヲ治瘉セシト愽ハル靈泉鶴之湯温泉ナリ。旅装ヲ新館樓上ニ解キ障戸ヲ排シテ其ノ眺望ヲ恣ニセンカ峯巒峨々トシテ迫リ眼下ヲ巡ル潺湲ノ溪流自然ノ楽ヲ奏シテ旅情ヲ慰ムルコト切ナリ。浴室ノ設備全ク整ヒ透明ナル温泉懸リテ数條ノ瀑トナリ浴槽亦玲瓏タリ。来リテ此ノ温泉ニ遊ブモノ春ハ浴窓ニ狂フ粉々ノ落花ニ、秋は槽中ニ流ルヽ片々ノ紅葉ニ雅趣豊カナルヲ賞セザルモノナシ。海抜約五百尺ノ高所ナレバ盛夏ノ頃ソノ幽邃ナル山気窓ニ入リ清風膚ヲ打ツテ涼味萬解ナル又嶂峰館ヲ繞リテ温泉滾々タルノ域ニアルヲ以テ厳冬ナホ寒サヲ知ラズ避暑避寒ニ妙ナリト云フベク、直に幽静閑寂ノ境トテ保養行楽ノ最適地トイフベシ。
      川汲温泉にて
    伏せ樋を漏る温泉 烟や蕗の薹  其仙
    (「尾札部村勢要覧」小林露竹編)

絵葉書スタンプ 佐々木重元提供


川汲温泉 山中旅館 昭和10年 市立函館図書館所蔵