海洋プレートの運動と付加テクトニクス

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海底の土台をつくっている玄武岩質の岩盤(海洋プレート)は、大洋底にある海嶺と呼ばれるマグマのわき出し口でつくられる。ここではマントルから上昇してきたマグマが冷えて固まることによって、次々と新しい海洋底(海洋プレート)がつくり出される。このようにしてできた海洋底は、海嶺から次第に遠ざかり、長い距離を移動した後に、大陸プレートにぶつかった所(海溝)で地球の内部へと沈み込んでしまうことがある。
 新しい海洋プレートができあがったばかりの海嶺では、水深が一般に数千メートルより浅いが、移動を始めて冷えるにしたがい海洋プレートは次第に重くなって、その下にあるアセノスフェアと呼ばれる部分に徐々に沈み込んでいき、しかも厚くなる。その結果、海洋プレート表面の水深は四〇〇〇メートルを超えるようになる。そして海溝で沈み込むころには六〇〇〇メートルから一万メートルもの深さに達してしまう。太平洋プレートのように、南米の西側の西経一一〇度付近の海嶺で生まれてから日本列島の東側にある千島海溝や日本海溝に沈み込むまでには、はるかな距離を長時間かかって旅をすることがある。
 太平洋プレートの生まれる所は南米の西側沖で、東太平洋海膨(かいぼう)と呼ばれている。そこは周囲の深い海底から山脈状に高くなっていて、新たにできた海洋プレートがわき出し口から西へ移動を始めると太平洋プレートとなり、東へ移動するとナスカプレートとなる。東太平洋海膨から日本海溝までは一万キロメートル以上も離れている。太平洋プレートはその距離を年間約一〇センチメートルのスピードで、赤道を斜めに横切りながら北西方向へ移動している。そうすると、日本海溝に沈み込む直前の海洋プレートは一億年以上も前に東太平洋海膨で生成されたものであり、そこでの海洋プレート上の堆積物は、太平洋の下を進んで来る間に海底に降り積もった遠洋、深海性の堆積物ということになる。