蝦夷はアイヌか

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以上のことからすると、逆に時代を遡(さかのぼ)れば遡るほど、混血の度合いが低くなっていくわけであるから、アイヌ・東日本人・西日本人の間の差も、同様に小さくなっていく。東北から北海道あたりでは、七世紀ころというのはまだアイヌ和人とがはっきり分かれていなかった(単なる日本人の地方差にすぎない)時期にあたるから、古代の蝦夷がアイヌか否か、という古くからの問いかけ自体が意味をなさなくなる。そもそもアイヌ文化自体、まだ成立していないのだから。古代にあって「アイヌ」という用語を使用するのは誤解の元である。蝦夷=アイヌ説の根拠として盛んに利用される「アイヌ語」地名という用語も、「擦文(さつもん)語」地名程度に置き換えるべきかもしれない。
 現在のアイヌ和人とは、たしかに文化的には異なる異民族ではあるが、人種的には同じモンゴロイドどうしなのである。この意味で日本人の二重構造は現代もなお維持され、混血も進行し続けているということになる。