授業料の廃止

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大正三年三月末をもって弘前市各尋常小学校授業料徴収は廃止された。年度でいうと授業料大正二年度まで徴収されたのである。
 市当局は、当初、授業料を廃止する意図はなく、在来どおり徴収するつもりで県当局に願い出たものの、県の許可を得ることができず、やむを得ず廃止に踏み切ったものである。(本節第二項参照)このときの授業料は一六銭、これは明治四十四年から据え置きになっていた。廃止になったのは義務教育尋常小学校のみで、高等小学校は従来どおり二〇銭を徴収した。市外居住者で本市の尋常小学校に入学する児童は、依託料として一ヵ月八〇銭を市に納入することも従来どおりであった。もともと政府は明治三十三年の「再改正小学校令」で義務教育授業料は廃止するとうたっていながら「特別ノ事情アルトキハ府県知事ノ認可ヲ受ケ市町村尋常小学校ニ於テ授業料ヲ徴収スルコトヲ得」という一項を設けたため、授業料廃止は空文となったいきさつがあった。大正三年に至って弘前市が授業料を廃止したのは、遅きに失したとはいえ、市民にとって喜ぶべきことであった。