写真202 方円館
方円館では、映画の幕間に短い演芸ものを挟むという「映画と実演」の二本立て興行を打ち出し、その職人町らしい独特の興行方法が名物であった。方円館には、中田アレダオンの愛称で呼ばれる名物弁士もいた。例えばキス・シーンの場面になると「彼と彼女はアレダオン」といったぐあいに、津軽弁の「アレダオン」の連発で観客の爆笑を誘うのである。中田アレダオンは、昼は飴売りをしていて、八坂神社(通称大円寺)の境内などで子供たちに映画の話を面白おかしく聞かせていたという。当時は、子供たちの遊びの世界にも映画の影響が反映され、竹や棒を兵児(へこ)帯に挟んでは役者気取りのチャンバラごっこや忍者ごっこ、その他さまざまな真似事をしては遊んでいたのである。
大正十四年八月、幕を下ろした寄席の米山亭に近い南横町に、錦館が開館した。しかし、わずか二年足らずの昭和二年に、北横町の遊郭から出火した大火で焼失している。