高度経済成長期の工業

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昭和三十年代から四十年代にかけて、弘前市の産業別就業人口は、漸次変化していったが、変化の方向は、第一次産業就業者の減少、第二次及び第三次産業の就業者の増加であった。いま、国勢調査を元にして弘前市が集計した数値を見れば、表32のようになっている。これによれば、弘前市においては、第三次産業の伸びが著しく、第二次産業の伸びがこれに次いでいることがわかる。昭和四十年代に入ってからの第二次産業、したがって工業の構成比は一四%で変化がない。
表32 弘前市産業別就業人口(人、%)
区分昭和35構成比%昭和40構成比%昭和45構成比%
総数67,74310070,04810076,652100
第一次産業32,0794727,2833924,94633
第二次産業7,686119,8151411,06314
第三次産業27,9784132,9504740,64353
『弘前市総合開発基本計画』昭和47年

 弘前市が昭和四十三年(一九六八)に刊行した『弘前市における商工業の現状と将来』は高度経済成長期の実態分析である。以下、同報告書によりつつ、弘前市の工業発展を見ていきたい。
 まず、高度経済成長期における弘前市の工業構成を見ておこう。昭和四十一年(一九六六)時点の弘前市の工業構成は、表33のとおりである。製造品出荷額に関しては、食料品製造業の比率が六三・六%で、最大であり、木材木製品工業、窯業がこれに次いでいる。この順序は従業者数で見ても同じである。事業所数では、食料品製造業、木材木製品工業、家具製造業、パルプ及び紙加工業、出版印刷業、窯業の順になっている。
表33 産業別・事務所数,従業員数,製造品出荷額等(全市)
区分事業所数従業者数製造品出荷額等
産業別実数構成比実数構成比実数構成比
  万円
昭和40年5055,235786,896
41年559100.05,858100.01,035,847100.0
食料18232.62,70946.2659,13063.6
繊維112.0891.55,8710.6
衣服142.51803.110,9971.1
木材5610.05649.6105,80410.2
家具458.11913.318,9191.8
パルプ305.43145.420,5142.0
出版234.14888.337,7993.6
化学
石油
ゴム
皮革20.4xxxx
窯業203.64668.091,2028.8
鉄鋼40.7230.42,0140.2
非鉄20.4xxxx
金属417.32864.940,6003.9
機械40.7260.45,4610.5
電気10.2xxxx
輸送40.7170.32,8460.3
計量
武器
その他12021.54337.427,0682.6
弘前市企画室『弘前市の工業-昭和41年-』
x印は個別企業の秘密保持の観点から発表されていない。

 これらの数値を規模別に、昭和三十六年(一九六一)から昭和四十一年までについて見だのが表34である。これらを見ると、弘前市全体の従業者数が増加していること、その一方で、従業者三人以下の従業者数合計が減少していることがわかる。減少はしているものの、従業者三人以下の事業所は全体の四一・一%あり、九人以下の事業所数は七四・四%になる。弘前市の工業の零細性がわかる。従業者九人以下の事業所の内容は、表35からわかる。これを見れば、食料、家具、金属、木材である。
表34 弘前市工業の累年比較(規模別)
昭和36年37年38年39年40年41年36年構成比41年構成比
規模別
事業所数総数433448523516505559100.0100.0
3人以下21122222420720023048.741.1
4~9人19919816618017118646.033.3
10~19人10665758214.7
20~29人3827285.0
30人以上2328272632335.35.9
従業者数総数4,0474,4834,9235,1905,2355,858100.0100.0
3人以下45946544139338744811.37.6
4~9人3,5884,0181,0321,1261,0451,13988.719.4
10~19人1,7479161,0431,12119.1
20~29人91864768911.8
30人以上1,7031,8372,1132,46142.0
製造品出荷額等総額393,507468,768560,794672,881786,8961,035,847100.0100.0
3人以下19,07525,14122,38821,69721,83528,4084.82.7
4~9人374,432443,62779,614101,99598,014120,93195.211.7
10~19人191,591107,371122,447152,56614.7
20~29人116,828113,868109,75110.6
30人以上267,201324,990430,732624,19160.3
前掲『弘前市における商工業の現状と将来』
注)製造品出荷額等の単位は万円

表35 産業別・規模別・事業所数(全市)
規模別総数3人以下4~9人10~19人20~29人30人以上
産業別 構成比 構成比 構成比 構成比 構成比 構成比
       
昭和40年505100.020039.617133.97514.9275.3326.3
41年559100.023041.118633.38214.7285.0335.9
食料182100.05429.77239.63016.584.4189.9
繊維11100.0545.5436.419.119.1
衣服14100.0642.9214.3428.6214.3
木材56100.01730.41628.61628.635.447.1
家具45100.02964.41328.912.224.4
パルプ30100.026.71860.0516.7413.313.3
出版23100.014.31147.8313.0626.128.7
化学
石油
ゴム
皮革2100.02100.0
窯業20100.015.0840.0735.015.0315.0
鉄鋼4100.0125.0375.0
非鉄2100.02100.0
金属41100.01843.91229.3819.537.3
機絨4100.0125.0375.0
電気1100.01100.0
輸送4100.0250.0250.0
計量
武器
その他120100.08974.22218.386.710.8
前掲『弘前市の工業-昭和41年-』

 昭和四十年代初めの弘前市の主要工場を概観すると、表36のとおりである。弘前市は、昭和三十年(一九五五)に弘前市工場設置奨励条例を作り、工場設置や拡充を奨励した。この成果が誘致企業地元企業の拡充に結びついている。これらの企業の中では二ッカウヰスキー弘前工場の生産額が一番多かった。同工場は、りんごを原料としたアップルブランデーを生産するほか、ウィスキーの瓶詰めを行っていた。第二位は北越ヒューム管(現ホクエツ)であり、弘前市周辺の公共事業による需要を期待している。第三位は日魯漁業(現ニチロ)で、りんごジュースなどの生産を行い、地元産の原料を利用している。日魯の弘前工場は、誘致企業の中で従業員数が最大である。一方、地元企業の中で生産額が最も多かったのは陸奥製菓であった。
表36-1 弘前市内主要企業の現況(誘致企業
会社名操業開始年月工場の規模従業員数(42.4.1)主要製品生産額
敷地面積建物面積昭和40年昭和41年
   千円千円
北越ヒューム管(株)弘前工場34.724,0961,884160ヒューム管268,180342,440
ニッカウヰスキー(株)弘前工場旧35.717,5954,781126ウィスキ1,210,3501,083,920
新40.7ブランデー
アップルワイン
日魯漁業(株)青森事業所弘前工場36.1016,5295,174266りんご濃縮ジュース145,000325,640
トマトジュース
山田マッチ製軸(株)弘前工場37.6新築5,9401,69040マッチ用軸木26,10027,810
共和コンクリート工業(株)弘前工場39.713,16727435護岸用ブロック62,72061,820
明治乳業(株)青森工場39.810,6511,35449市乳159,770217,870
東和電材(株)弘前工場40.22,5531,62180配電盤30,25072,230
前掲『弘前市における商工業の現状と将来』

表36-2 弘前市内主要企業の現況(地元企業
企業名操業開始敷地面積従業員数主要製品生産額
昭和40年昭和41年
   千円千円
弘前ガス(株)31.812,84833ガス
弘前広葉樹工業(株)32.814,31948ぶな・フローリング72,44081,870
陸奥製菓(株)41.8(新)39,600420パン・菓子458,070843,540
弘前農村工業農業(協)31.36,500130りんごボイル・ジヤム・りんごパインスタイル236,720335,690
日本果実加工(株)31.94,00060りんご果汁りんごジュース53,46073,480
津軽製紙(株)41.22,33024ちり紙-12,920
ブナコ漆器製造(株)38.101,61136菓子器・盛器・銘々皿30,16036,780
前掲『弘前市における商工業の現状と将来』
注)「-」は不明