卸売業の動向

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ここで、弘前市の昭和五十五年度の卸売業について、弘前商工会議所による調査結果を見てみよう。これは、弘前商工会議所が中小企業庁の委託により行った商業近代化調査の報告である。
 昭和五十四年の商業統計調査によれば、弘前市の卸売業の商店数は五八六(県全体の一四・九%)、従業者数は五、三八五人(一五・五%)、年間販売額では二、二五〇億三、三四六万円(一三・四%)、一店当りの年間販売額は三億八、四〇二万円となっている。これを一〇年前の昭和四十五年と比較すると、商店数では五七・一%の増加率、従業者数では二七・八%、年間販売額では二・六倍の増加となっている。県全体に占める割合は商店数では一〇年前に比べて〇・三%の増、従業者数では一・三%の減、年間販売額では二・九%の減少となっている。特に一店当りの年間販売額が四十五年には、県平均の一一一・〇%であったものが五十四年には、県平均四億二、七六一万円であるから、大巾に下回っており、県平均の八九・八%の水準しかなく、その地位は大巾に後退している。これは本市の卸売業が比較的規模が小さく、商圏が津軽圏内を主にしていることや、大規模卸売業者大手代理店をもつ青森市に浸食されているからである。(中略)
 卸売業の商圏は、必ずしも小売業の商圏とは一致せず、小売業よりもはるかに広い商圏をもつ都市もあれば、逆に商圏の狭い都市もある。県内の場合は三市に集中しており、これらを中心に卸売活動が展開されている。青森市の卸売業は大規模卸売業者や大手代理店をもち、弘前・津軽圏域をはじめ、八戸地区、むつ地区への販路を有しているだけでなく、道南、秋田県北、岩手県北まで進出しているといわれ、商店数においても従業者数においても、また年間販売額においても、県内他市を圧倒している。
 弘前市の卸売業者は、津軽圏域を主に、青森市内に一部その販路を有しているものと考えられる。さらに秋田県北、岩手県北にも一部進出している。したがって弘前市からみると、青森市の卸売業者が最強競合業者であり、しかも当市は資本力、販売力、経営力などの点て劣っているがために、青森市におされ気味である。八戸の卸売業者の弘前地区への参入は、距離的立地的にみても、まだ少ないものといえるわけで、競合関係としては考慮しなくてもよかろう。
(『弘前市商工会議所会報』二八八)

 卸売業については青森市と商圏を争っていることがわかる。また、弘前市の卸売業は、一店当たりの売上金額において、青森県平均を下回り、小規模であった。その業種構成の特徴は次のようである。
 弘前市の卸売業の昭和五十四年の業種構成をみると、商店数では農畜産物・水産物が一八・三%、食料・飲料一七・二%、機械器具一六・二%、建築材料一一・四%、その他の卸売業一〇・六%の順となっている。また従業者数の構成比は農畜産物・水産物一八・七%、食料・飲料一七・四%、機械器具一五・六%、その他の卸売業九・六%、建築材料八・八%となっている。さらに年間販売額のシェアでは、農畜産物・水産物三六・四%、食料・飲料一四・〇%、機械器具一二・七%、建築材料八・一%、鉱物・金属材料七・〇%となっており、第一次産業に関連する業種が、ほぼ半分を占めている。これはやはり周辺農村地域の反映の表われであり、また概して消費型業種が多いのは、弘前市の消費都市的性格の表われである。なお一店当りの年間販売額では、鉱物・金属材料の一一億二、五二八万円がトップで、続いて農畜産物・水産物の七億六、六〇九万円、化学製品三億九、九一八万円、医楽品・化粧品三億一、二五〇万円となっている。(中略)
 卸売業はその商店数、従業者数、年間販売額とも年々増加傾向を示して来たが、しかし県全体に占める割合は、一〇年前に比べて従業者数、販売額において低下している。特に一店当りの年間販売額が、一〇年前には県平均の一〇%以上も上回っていたが、最近では逆に一〇%以上も下回っており、長期的に低落傾向を示している。これは本市の卸売業が、比較的小規模であること、つまり商店の法人化率をみると、五八・四%(県内全市平均六六・三%)であり、また、一〇人未満の商店が七〇・六%(同七二・三%)と小規模店が多いこと、さらに商圏が津軽圏域を中心としていることや商業・流通の拠点都市青森市に浸食されていることにその要因がある。この相対的低下にいかに歯止めをかけるかが今後の課題である。
 業種構成としては農産物・水産物、食料・飲料関係といった第一次産品に関するものが上位を占め、そのほかに建材、機械器具、衣服など概して消費型業種が多い。農産物・水産物、食料・飲料で全体の約五〇%を占めていることは、周辺の農村地帯を考え合わせると当然のことであるが、全国ではこれらを合わせた平均が、約三〇%といわれているから、かなり高く、これらの業種はウェイトにおいても効率においても、弘前市における中心的業種である。
(同前)

 このように、弘前市の卸売業は農産物等の第一次産品が占める比率が高く、周辺農村地帯との結びつきが強いことがわかる。