台風一九号とりんご被害

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平成三年(一九九一)九月二十八日早朝、青森県を突如襲った台風一九号はわずか一、二時間のうちに大きな爪痕を残し、絨毯(じゅうたん)のように敷き詰められた落果りんご、根こそぎ倒れた樹木、鉄製の防風ネットや野菜用パイプハウスの倒壊など、見るも無残な姿を津軽のりんご地帯にもたらした。
 台風による被害としては青森県では昭和二十九年(一九五四)の「洞爺丸台風」(台風一五号)が知られるが、このとき、落果したりんごは一二万三六〇〇トンで、当時の県内生産量三三万トンの三七%に相当する。台風一九号では、予想収穫量四九万二一〇〇トンのうち、三四万五〇〇〇トンが落果し、実に、七〇%を超える過去最悪の被害となった。さらに悪いことに青森りんごの主力である晩生種の「ふじ」「王林(おうりん)」の収穫前の突風であったこともあり、被害規模は広がった。被害額は、落果りんごのほかに、樹上損傷四万三〇〇〇トン、樹体の倒木五六万七〇〇〇本を加えると、その総額は七四一億七〇〇〇万円に達し、その額は前年の平成二年(一九九〇)のりんご生産額に匹敵した。また、りんご以外の農林業へのダメージも大きく、これらを合わせると総額は八四六億三六〇〇万円の巨額に上った。

写真186 台風19号による落果りんご

 例を見ない台風一九号の急襲による被害に際し、行政をはじめ各団体・個人の支援が続けられた。国の天災融資法と激甚災害法の適用のほか、県も独自の台風被害対策を迅速に行った。さらに、県りんご協会は、十月十八日、弘前市で「台風十九号災害青森県りんご生産者決起大会」を開催し、①迅速な救済措置、②園地復旧と恒久防風対策、③落果りんごの消費拡大、④岩木山頂レーダーと弘前測候所の設置、⑤果樹共済の抜本的見直しを決議し、復旧運動に取り組んだ。また、消費者からの支援もかつてなく広がりを見せた。青森県生活協同組合連合会では十月四日の常務会で、「落果リンゴ買付け・販売、カンパ支援」の訴えを出し、十月二十日には岩木川の河川敷で「津軽地区台風災害対策連絡会」の主催する「台風被災農家支援落果リンゴ青空市」が開催されるなど、被災農家に対する大きな支援となった。このほかにも、銀行、郵便局などさまざまな団体が援助の手を差し延べ、りんご生産者を勇気づけるかつてない行動が展開された。しかし、過去に例を見ない本県りんご栽培史上最大の災害により、出稼ぎに行かざるを得ない農家も多く出た。