中山道は、江戸時代の五街道のひとつで、江戸の日本橋と草津を内陸経由で結ぶ街道で、草津の追分以西は東海道と道を共にし、京都の三条大橋までつながります。江戸から草津までは129里10町余（京都までは135里34町余）で、67箇所（京都までは69箇所）の宿場が置かれました。
　中山道66番目の宿場町武佐宿は、瓶割山の山裾近く、中山道と八風街道との交わる場所に位置します。
　武佐宿は、中世から宿駅的な機能を有し、その中心は現在の宿場町のやや南側、長光寺とされています。中世の武佐宿は、長光寺を中心にした軍事的な拠点ともなり得る空間として発展を遂げてきたと考えられています。文和3年(1354) 12月、南朝軍が京都へ迫った際、足利尊氏ら北朝軍は、後光厳天皇とともに「江州武佐寺（＝長光寺）」に避難しています。
　一方、公家が東国へ行くときの宿泊先としても利用されていました。天文2年(1533)、尾張国に向かった公家の山科言継は、同年7月2日に京を出発し、坂本（大津市）で1泊、翌日船で志那（草津市）へ渡り、守山から馬に乗って、「むさの長光寺に一宿」したと記されています。
　江戸時代の武佐宿は、武佐村・長光寺村の2ヵ村にまたがり、慶長7年(1602) 徳川家康の中山道整備の時、長光寺周辺の家屋敷を街道沿いに移転したという記録が残ります。
　天保14年(1843) の中山道宿村大概帳よると、宿高890石余、町なみは8町24間、人口537人、家数183軒、本陣・脇本陣各1軒、旅籠屋23軒で、宿場内は武佐村の地下町・仲町・西町、長光寺村の長光寺町で構成されていました。
　現在、八風街道との分岐点に道標が残るほか、宿場役人宅などいくつか往時の趣を残す建物が散見されます。本陣跡には表門・土蔵・庭園が残ります。