『入北記』には、「此場所支配人、土人ノ取扱ヒ以ノ外、不宜場所第一ト云フベシ、ヨリテカク仰渡サルト見ヘタリ」と、イシカリ場所がいかに「不宜場所」であったかを、感慨をこめて指摘している。このような弊害は、イシカリ場所に限らず他場所にもかなりみられ、場所請負制の構造自体からくる弊害であることはもちろんである。しかし、特にイシカリ場所が尖鋭的にあらわれており、この解決は場所請負制の廃止―イシカリ改革に、またなければならなかった。
さらに、利熙がこの後六日にマシケにて出した、場所詰調役への申渡しによると(石狩土人申渡)、次のようなものであった。すなわち、最近場所詰役人は、流弊になじみ「御開拓之御主意取失」う心得違いをしている。今後は諸産物も増やし開拓もおこなっていくので、請負人をはじめアイヌにいたるまで田畑の切開を申し諭し、「御主意柄」をわきまえ奉公を尽し、流弊を一洗しなさいという内容であった。ここには直接、イシカリ場所についてはふれていないが、ここでいう「流弊」とはイシカリ廻浦の直後だけに、暗にイシカリ場所のことをさしているとみてよいだろう。