教育の普及に関して、大きな問題となったのはやはり財政であった。ここではまず
札幌区の教育費について若干を紹介してみたい。二十五年度の区の予算案については、今のところ
区費が九四〇七円九二銭七厘、区教育費が八四九九円三五銭、
札幌病院費が一万九二四七円五六銭と、費目の総額のみしか把えられない(
北海道毎日新聞 二十四年十二月十一日付)。二十六年度分はやや内容が記されていて教育費総額八八九一円のうち、六六一一円は授業料収入、その余二二八〇円は資金、貸付利子その他で充当し、一般
区費からの繰入れはないとしている。ただしこれは経常費であり、二十五年大火で焼失した学校新築のための区債一万六〇〇〇余円償却のため臨時費として約三〇〇〇余円が計上され、この分は
区費負担となっている(
北海道教育雑誌 九)。
二十八年度当初予算はさらにやや具体的となっているので、表8に掲げる。
歳入 | 歳出 |
第1款 | 経常収入 | 6607円75銭 | 第1款 | 小学校費 | 9006円90銭 |
第2款 | 財産より生ずる収入 | 1766 . 80 | 第2款 | 幼稚園費 | 411 . 16 |
第3款 | 区費補助 | 932 . 71 | | | |
第4款 | 前年度繰越 | 150 . 00 | | | |
収入予算高 計 | 9056 . 26 | 支出予算高 計 | 9056 . 26 |
1.『北海道毎日新聞』(明治27年11月13日付)による。 2.合計は合致しない。 |
ここでいう経常収入とは、授業料収入であろう。またこの年には
区費からの繰入(補助と記されている)がある。またこの表のほか、臨時費中の六三八七円余は教育関係であろうと思われる。
これらからみると
札幌区の場合、少なくとも経常費の大半は授業料等でまかなわれており、区民一般の負担はきわめて少なかったといえる。しかし別に述べるように、高額な授業料が就学率の低下をもたらしているという指摘もあり(
北海道教育雑誌九)、単に予算表からだけでは負担の軽重は論じられない。
つぎに同年度決算書によって支出内訳の大要をみると表9のとおりである。
第6款 教育費 | 第7款 幼稚園費 |
第1項 職員俸給 | 5912円31銭8厘 | 第1項 俸給及雑給 | 341円19銭7厘 |
第2項 雑給 | 1029 . 52 . 6 | 第2項 需要費 | 16 . 62 . 1 |
第3項 生徒試験費 | 125 . 28 . 9 | 計 | 357 . 81 . 8 |
第4項 需要費 | 1300 . 75 . 0 | 第8款 教育補助費 |
第5項 新営修繕費 | 534 . 08 . 1 | 第1項 教育補助費 | 250 . 00 . 0 |
第6項 租税及区費 | 40 . 81 . 3 | 計 | 250 . 00 . 0 |
第7項 学務委員費 | 46 . 40 . 0 | |
計 | 8989 . 17 . 7 | |
これによれば、教育費の大半を人件費で占めているが、これは村落部も同様で、大筋として全国共通の現象であろう。