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翼賛運動と公区

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 昭和十七年は衆院、道会、市会と続く議員選挙の年であったことは前項で述べた。この年政府は「部落会町内会等ノ指導方針」を決め、大政翼賛会町内会(公区)を指導する組織であることを明示した。すなわち公区の役員を大政翼賛会の世話役世話人に委嘱して、公区を選挙母体とする特定候補者の推薦を行い、その当選をはかろうというのである。
聯合公区公区長及び隣保班長各位に対して、大政翼賛会より世話役又は世話人を御嘱託致して、御協力を願って居る次第でありますが、世話役世話人は、大政翼賛会の最前線運動者、即ち直接に国民大衆と接触する所の翼賛運動者であります。而して之を表より見るときは、即ち各位は国民組織の最末端たる公区の役員であります。即ち公区役員と翼賛会世話役世話人とは、表裏一体の関係にあるのであって、末端最前線の実践活動の担当者又は指導者と致しましては、公区役員といふも世話人世話役と申すも、其の態度その動き方に、何等表裏の区別もなく、それ/゛\名称を分けるの必要もなく、全く一体であるのであります。
(三沢寛一 公区精神)

 公区推薦者を聯合公区で調整し、さらに全市統制の体制を作ろうとした。この年の市事務報告中、市民課公区係の業務に次のように記録されている。
議員推薦制実施 道会議員補欠選挙及市会議員総選挙実施ニ当リ翼賛選挙ノ啓発運動並ニ候補者推薦銓衡会の結成事務ヲ取扱フ
主要ナル会合
 四月四日公区長会議  翼賛選挙貫徹運動ニ関スル件
 六月三日公区長会議  道会議員選挙候補者推薦制ニ関スル件
 八月二十日公区長会議 市会議員候補者推薦制実施ニ関スル件

 公区及び聯合公区は市役所の下部機関であるとともに、この年からは大政翼賛運動を推進実践する末端組織に組み込まれ、翼賛会札幌支部の単位となって、推薦式選挙を実践することになった。これは公区聯合公区が担う新たな役割である。
 三沢市長は十八年三月の公区長講習会で、公区活動がもたらした効果を一〇カ条あげ、公区は「階級的対立を防止し又之を調和する」「民意民論の発達と中正なる公論の成立とを助ける」「政党的抗争を防止し、政治家の反省自粛を促し、以て政治の浄化を来たす」と述べた。その効果とは翼賛選挙の根底を担った公区運動への評価であろう。また、十七年四月に公区役員が改薦されたおり、公区と今後の翼賛運動の関わりを次のように説明している。
公区は市民が日常生活面に於て、大政翼賛の臣道を実践するのに、最も都合よき又最も効果的なる地域的国民組織であります。即ち国策上意を国民に徹底浸透せしめて協力実践を促し、又民意下情を上方に反映進達せしめて、当局の企画施政の基礎資料たらしめ、同時に又隣保相互の親和協力扶助によって、共同福利の増進公益の達成を図るの機関であるから、お互に之が運営の円滑適正のために努力尽瘁することは、これ真に大政翼賛の道に外ならぬのであります。
(三沢寛一 公区精神)

 こうした公区の推移を見ると、十五年三月の創設目的は市役所側に立つ限り着実に達成されつつあったということができ、国家総動員法下にあって不可欠な組織となっていったことがわかろう。