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本署新築

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 札幌区に市制が施行されると、札幌警察署の位置及び管轄区域を決めた道庁令に「札幌区」とあるのを「札幌市」に改め(道庁令第一一六号 大11・8・3、但し8・1より施行)、業務はそのまま受け継いだが、たまたまこの前後に警察制度の改正があって、全道的な組織強化がはかられた。すなわち、大正十年から国費による毎年一〇〇万円の拓殖警察費が支出されることに決まり、警察官を増員し、分署を警察署に昇格し、さらに新分署を設置した。また、十五年道庁官制の改正にともない、分署をすべて廃止することになった。開拓使以来続いた分署は警察署に昇格するか廃止するかをせまられ、札幌警察署のもとにあった江別、石狩の二分署はいずれも警察署として独立したから、札幌署の管轄地域は札幌市のほか豊平、札幌、白石、藻岩、琴似、篠路、手稲、広島、恵庭、千歳の各町村となり、昭和十七年までこれによった。この分署廃止は全国一斉に実施されたもので、北海道に六七署を誕生させたのである。
 警察の費用は地方費(道費)によるが、国庫は前述の拓殖警察費のほか総額の六分の一を負担することになっていた(勅令第二五六号 大11・5・12)。しかし警察署や交番の建築に市民から寄付を集め、問題視されることがあった。新聞投書に次のような意見がある。
近頃遊園地(注・中島公園)の方で、交番所の造り換へに際し、政府の予算は木造で、費用はそれしか出ないが石造を建て度い。あなたから二十円出して貰ふつもりですから出して貰ひ度いなどと云って廻っている。立派に建てゝ附近が奇麗になるのは喜ばしい。石造ならば体裁もよいし長持もする。だがそれは予算の許さない所ではないか。にも拘らず附近の住民を搾ってまでも石造にする必要はあるまい(後略)。
(北タイ 大11・7・2)

 交番のみならず警察署改築でも同様な問題となった。札幌市会は昭和六年三月意見書を可決し、「市勢ノ進展ニ伴ヒ警察事務モ亦益々増加シ、従来ノ設備ヲ以テシテハ処務ノ不便甚シキノミナラス、市民ノ安寧秩序ヲ保安スルニ於テ遺憾ノ点少カラス。仍テ速ニ改築ヲ実行セラレムコトヲ望」(市会会議録 昭和六年第一回)んだ結果、九年十一月鉄筋コンクリート造り、地下一階地上三階建ての威容を誇る本署庁舎が実現した。しかし建築費用の約半分は市民寄付によったのである。この建物は東京の警視庁を模した昭和モダニズムの遺産といわれたが、平成八年老朽化のため取り壊された。

写真-16 札幌警察署(昭9.11完成,北1西5)

 警察署はその組織内に巡査部長派出所巡査派出所巡査駐在所を置き、警部補派出所が設置されたところもあるが、札幌市内にはみられない。そのうち巡査部長派出所は一級町村役場の所在地、巡査派出所は都市部内、巡査駐在所は二級町村役場所在地と主要村落に設置することを原則としたが、集落の発達衰退にともない変更がしばしば繰り返された。市制後の札幌市内における派出所の変遷は表24のとおりである。表にある請願巡査派出所とは、企業や町村、個人等で特定の目的をもって費用を一切負担し、巡査の派出を受ける制度で、明治十四年に設置の方針が打ち出されるが、全道的に採用されるのは二十一年からである。たとえば札幌では、二十八年北海道炭砿鉄道株式会社が、その社宅街の安全警備のために、中央区北二条西一二丁目に請願巡査派出所の設置をはかった。これの巡査は定員外である。なお、市内に駐在所が置かれたこともあるが短期間で、町村合併で駐在所が派出所となったり、札幌駅構内に取締巡査出張所という特例が設けられた時もあったが、原則的にはこれも派出所と同様の役割をはたした。
表-24 巡査派出所
巡査派出所請願巡査派出所
大1115217
 1217219
 1316319
 1416521
昭元16319
 217320
 317320
 417219
 517219
 618321
 718321
 818321
 918321
 1018321
 1118321
 1220323
 1320424
1.昭和14年以後不明であるが,『北海道警察史』(昭和篇)によると,昭和20年の派出所数は23ヵ所であるから,あまり大きな動きはなかったものと思われる。
2.札幌市統計一班』より作成。