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株式会社の利益率

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 札幌には、大小さまざまの会社が存在していた。これらのうち、株式会社の各期営業報告(決算報告)をもとに作成したものが表7である。ここでは、払込資本金利益率を比較してみた。まず、ここに掲げた三三社のほとんどは、札幌に本社を置き札幌で営業活動を展開していた企業である。なお大日本麦酒、今井商店は東京に本社があった。企業の側からみると、たとえば北海道拓殖銀行、帝国製麻などは札幌だけで事業を行ったわけではなく、むしろ各社にとって札幌の比重は大きくないものもある。しかし、札幌経済にとって重要な位置にあるので、これらに含めた。
表-7 主要会社の払込資本金利益率 (%)
業種銀行無尽商事・拓殖商店・市場運輸
会社名北海道拓殖銀行北門銀行北門貯蓄銀行札幌無尽北海道無尽北海道拓殖北海道土地民衆振興今井商店古谷商店藤井商店森永製品北海販売札幌市場定山渓鉄道札幌軌道軽石軌道札幌運送社
大14上9.017.210.113.3-8.66.4
 14下10.016.98.914.46.6-5.49.09.112.08.64.311.4-8.3
 15上9.07.47.332.028.91.713.94.7
昭元下9.211.86.732.5-6.60.99.77.87.815.95.10.49.9-5.3
  2 上10.017.37.516.23.19.74.70.6
  2 下10.041.98.019.279.2-0.32.110.07.29.48.27.73.713.3-5.94.3
  3 上9.013.99.715.417.12.110.02.04.0
  3 下9.115.66.6-0.89.116.015.83.1
  5 上9.013.25.911.823.1
  5 下9.013.25.612.318.6-1.43.08.4-1.5
  6 上7.112.65.611.414.76.610.02.93.1
  6 下8.512.65.612.612.7-1.96.28.8-2.17.48.72.98.80.05.3-9.03.1
  7 上8.012.45.812.512.88.1-6.62.4
  7 下5.612.57.611.19.9-1.13.31.310.37.1-1.67.95.7-6.92.9
 
業種倉庫電力・ガス繊維工業食品工業化学工業その他工業その他平均
(単純平均)
会社名札幌拓殖倉庫北海倉庫北海水力電気札幌送電北海道瓦斯帝国製麻北海道製綱大日本麦酒極東煉乳大日本乳製品札幌製氷三星薬品北海道窯業札幌木材札幌印刷定山渓温泉
大14上0.04.05.86.226.98.2
 14下27.917.60.03.94.86.223.81.66.20.220.8-2.3-3.27.20.47.6
 15上0.43.72.40.923.0-0.49.6
昭元下31.317.24.54.3-4.6-1.520.014.26.310.4-0.4-13.29.10.27.3
  2 上4.65.74.8-5.80.421.3-0.16.7
  2 下35.517.25.45.64.2-1.61.941.46.412.3-1.2-9.62.07.011.5
  3 上5.5-2.84.3-50.02.012.5-0.33.4
  3 下32.417.35.56.61.91.012.75.613.00.29.5
  5 上5.30.210.29.8
  5 下28.15.35.2-1.48.18.0
  6 上5.30.15.10.32.28.0-43.3-0.53.0
  6 下31.718.85.30.05.20.42.17.10.71.85.60.0-32.914.10.24.7
  7 上5.40.05.20.11.90.04.9
  7 下23.32.44.50.05.10.12.66.81.10.96.50.0-2.74.5
1.決算期が1年のものは下半期に記した。
2.北海道拓殖銀行『北海道及樺太株式会社集覧』(昭和4年版,昭和8年版)及び各社『営業報告』より作成。

 各社の位置を知るために、業種ごとの利益金を算出した。昭和元年下半期において利益金額合計は、六一四万三〇〇〇円であったが、このうち八九・四パーセントは食品工業、一九・五パーセントが銀行、四パーセントが商店・市場、三パーセントが電力・ガスから生み出された。無尽、運輸、倉庫、化学工業、その他は一パーセント以下であった。さらに業種小計がマイナスの利益金(損失金)を計上したものに繊維工業(マイナス一四・一パーセント)、商事・拓殖(マイナス一・九パーセント)、その他工業(マイナス〇・七パーセント)があった。大企業を含む業種と中小企業業種との格差や大企業・中小企業格差が大きいために、加重平均を計算すると大企業の数値に引きつけられてしまう。そこで、表7の利益率平均は単純平均をとった。
 決算期が一カ年の企業は下半期の欄に記入したので、下半期を各年につきみていくと、大正十四年下半期から昭和二年下半期にかけて赤字企業が目立つ。特に、金融恐慌後の昭和二年下半期よりも金融恐慌前の昭和元年下半期の方が、平均利益率・赤字会社数ともに悪いことに注目したい。後に第二節で詳述するが、北海道札幌において金融恐慌は軽微であったが、むしろその前年の方が深刻な不況であった。かわって、昭和恐慌時に目を転じると、赤字会社数は、昭和六、七年で四社にとどまる一方、平均利益率は以前よりも低下した。すなわち、昭和元年不況、金融恐慌は、高利益企業と低利益(赤字)企業との格差を伴ったが、昭和恐慌では、格差は圧縮されながら低利益に陥ったといえるだろう。
 先にみた利益金の業種別シェアを昭和六年下半期についてみてみよう。多い順に食品工業(六三・六パーセント)、銀行(二一・〇パーセント)、電力・ガス(一四・七パーセント)、繊維工業(一・〇パーセント)と並び、赤字はその他工業(マイナス一・八パーセント)、商事・拓殖(マイナス〇・五パーセント)となっていた。これら以外はいずれもプラス一パーセント未満であった。電力・ガスの比重が高くなっていることは注目できる。
 次に、業種別の平均利益率(加重平均)は、昭和六年下半期において、第一位倉庫、第二位無尽、第三位銀行、第四位食品工業、第五位化学工業の順となり、ワースト三は、その他工業、商事・拓殖、繊維工業であった。昭和元年もほぼ同様の傾向であった。
 札幌における株式会社は、金融・流通・一部工業(食品、化学)が相対的に高利益であり、絶対的には食品工業・銀行・電力・ガスなどが利益の源泉であった。