都市における生鮮食料品の安価・大量供給を目的とした中央卸売市場法(大12・3公布、11月施行)に基づき、六大都市に続き、地方都市においても中央卸売市場設立が検討されはじめた。北海道では、札幌、小樽、函館三市が対象とされ、道が市に区域選定を依頼してきた(北タイ 昭4・9・21)。市では、昭和八年に中央卸売市場調査委員会を設け、橋本市長は、「札幌の中央卸売市場は、札幌市及豊平町、白石、札幌村、藻岩村、琴似村の一市一町四ヵ村を一丸として」設置するとの方針を述べた(北タイ 昭8・7・30)。九、十年にかけて同委員会経営部特別委員会、建設部特別委員会などを開き、翌年に調査・審議を完了した(札幌市事務報告 各年)が、結局中央卸売市場は実現しなかった。設立を断念した理由は明確ではない。ただ、市会議員若狭由次郎が十年十一月に新聞紙上で、中央卸売市場は財政難の札幌市には時期尚早との見解を述べている(北タイ 昭10・11・5)。市会では、市の財政赤字が問題となっていた時期なので、財政的理由から議会提出に至らなかったものと思われる。