大正十四(一九二五)年七月、内務省社会局第二部長と文部省普通学務局長は連名で、各地方長官と中央職業紹介所長宛に「少年職業紹介ニ関スル件依命通牒」を発した。これは小学校卒業者への職業紹介に際し、本人の「性質及能力ニ最モ適応スベキ職業ニ就カシムルコト」が重要であることを指摘したうえで、その「性質及能力ニ付最モ精通スル小学校ト職業ノ状況ニ通ズル職業紹介所ト相互連絡ヲ保チ提携協力」していくことの必要性を述べたものである。この通牒は当時の全国的な経済不況のもとでの小学校卒業者の就職推進策の一環として、小学校と職業紹介所との連携を基軸とした組織的な「職業指導」を実施するための社会システムの構築を意図したものである。
北海道庁はこの通牒を受けて、十五年一月に「少年職業紹介要領」を制定し、「求人口の開拓並紹介」を担当する少年職業紹介委員の設置や対象児童の適性検査の方法、小学校と職業紹介所の「聯絡方法」などを具体的に定めるとともに、同年五月に開催した「支庁長市長会議」を通じて、その趣旨を徹底した。この要領にもとづいて、札幌市立職業紹介所が管轄する「聯絡区域」は札幌市と石狩・空知の両支庁の範囲とされ、その紹介業務の対象となる「聯絡小学校」には、現在の札幌市域では西創成尋常高等小学校をはじめとする一五校が指定された。
また、少年職業紹介委員には「市町村内ノ事情ニ精通シ、公共心ニ富ミ、衆望ヲ有シ、且ツ生活ニ余裕アル篤志家又ハ小学校教員、市町村吏員、学務委員其ノ他公職ヲ有スル」者が選任され、戸津高知(札幌市学務委員)、林造酒太郎(札幌市視学)、藤森武左衛門(藻岩村村会議員)ら六三人が委嘱された(札幌市立職業紹介所 少年職業紹介要覧 大15)。